裁判員会見(2010.12.2)

 

「頭が真っ白…でも深い議論ができた」「被告には前向きにとらえてほしい」感想を問われ、涙ぐむ女性裁判員も

現場

 中央大理工学部教授、高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を刺殺したとして、殺人罪に問われ、東京地裁で懲役18年の実刑判決が言い渡された、卒業生で元家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の裁判を担当した裁判員の記者会見が2日夕、東京・霞が関の司法記者クラブで始まった。補充裁判員2人を含む8人の裁判員が出席し、裁判員裁判の審理に参加した感想などを述べていった。

 裁判員1番は30代の女性会社員、裁判員2番は42歳の男性会社員。裁判員3番は30代の女性。裁判員4番は53歳の男性会社員。裁判員5番は37歳の自営業の男性。裁判員6番は30代の女性会社員。補充裁判員1番は50代の女性。補充裁判員2番は24歳の女性公務員だ。

 懲役18年という実刑判決を下した裁判員らの顔には一様に疲労の色がにじむ。

記者「報道でも有名になった事件でしたが、裁判員裁判で裁判員を務めた感想は?」

裁判員1番「自分が裁判員に選ばれたときは驚いたし、不安があったけれど、1週間議論をした結果をお伝えできてほっとしています」

 裁判員1番の女性は涙ぐみながらそう話した。

裁判員2番「難しい内容で非常に疲れました。自分が裁判員に選ばれた意味や素人が1人の人を裁くことの意味を考えたりしていましたが、精いっぱいやろうと努めました」

裁判員3番「頭が真っ白で…でも深い議論ができたと思います。今回の結果を被告には前向きにとらえてほしいです」

裁判員4番「この1週間、ものすごく疲れました。いろんなことを議論、評議して、かなり濃度の深いディスカッションができました。今はほっとしている気持ちでいっぱいです」

裁判員5番「とてもいい経験になりました」

裁判員6番「日を追うごとに人一人の人生を左右することの重さを感じましたが、真剣に向き合い日々を過ごせたので今はほっとしています」

補充裁判員1番「貴重な経験ができ、充実していました」

補充裁判員2番「頭がくらくらしています。個々(の内容)まで、膨大な情報を頭に入れていたのが、今はシューッと少しずつ空気が抜けていく感じでほっとしています」

 裁判員らは感想を述べ終わると、安堵の表情を浮かべた。記者が次の質問に移った。

記者「凄惨な現場写真を見てどう感じましたか」

裁判員2番「現場写真は正しい評議をして判断するためには致し方なかったと思います。人生の中であれだけすごいものを見たのは初めてでしたが、目的は裁判なので仕方ないと思いました」

裁判員6番「映像は…想像で議論することが一番怖いことですから、現実と結びつけるという意味では重要だと思いました」

裁判員4番「証拠の一部ということで見なければいけないのでやむを得なかったと思います」

補充裁判員2番「映像を初めて見たときは驚いたし怖いと思いました。家に帰るとよみがえってくることもありましたが、日を重ねるごとに(裁判員の)チームの人と写真の意味をとらえることができたので、自分にとってマイナスとは思っていません」

 裁判員たちは公判の中で示された凄惨な現場写真と、真剣に向き合ったようだ。

 続いて記者は責任能力を判断することの難しさについて裁判員に感想を求めた。

裁判員3番「責任能力の判断は確かに難しかったのですが、裁判官や検察の方や鑑定人が分かりやすい説明をしてくれたのでいい議論ができました」

裁判員4番「裁判官が分かりやすく説明してくれたので、それに従って判断しました」

補充裁判員2番「基礎的な知識など裁判長の方たちが教えてくださった中で、チームのみんなが同じ土台に立って議論を進められたと思います」

 うつむいて小さな声で質問に答える女性裁判員や、ハンカチを握りしめながら一言ひとことかみしめるように話す男性裁判員。

 続いて記者は裁判員らが公判の中で山本被告に抱いた印象についての質問を始めた。

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