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(7)極刑望む娘に「腹立たしい!死んでしまえば楽」

鈴香被告の母親に対する弁護側の質問は、情状面に移る。終始、声を震わせながら、被告をかばい続ける母親。一方、終始淡々としていた鈴香被告が、初めて目を閉じ、母親の言葉に聞き入る様子をみせる。

弁護人「あなたは加害者の母親であり、被害者の祖母という複雑な立場にあるが?」

証人「私は彩香の遺族と考えたことはない。彩香も鈴香も大事な娘。下の娘は帰ってこないが、上の娘はもしかしたら私の手元に帰って来るかもという思い」

弁護人「あの時、こうしていればよかったということは?」

証人「(事件翌日の)4月10日、私は仕事が休み。いつも休みの前日は(鈴香被告と彩香ちゃんを)食事に誘っていたが、当時、私は疲れていて『今晩、食事においで』と言えなかった。もし言っていれば、彩香が川に落ちた時間は家族で食卓を囲んでいたかも…」

母親は思わず泣き崩れた。

弁護人「いま、彩香ちゃんのためにしていることは?」

証人「朝晩、肉でもなんでも彩香の好きな食事を作ったときは、お供えしている」

さらに母親は嗚咽(おえつ)を漏らしながら、米山豪憲君や遺族、地域社会に対する謝罪の言葉を口にする。

弁護人「落ち度のまったくない子供(豪憲君)を殺害した犯人。遺族にどう思うか?」

証人「娘がとんでもないことをした。申し訳ない気持ちでいっぱい」

弁護人「事件当時、地域の住民は不安を抱いていた」

証人「鈴香がとんでもないことをして、地域の人や子供たちにも恐ろしい思いをさせて申し訳ない」

それでも、母親は極刑を望むとする娘に対し、時折、怒気をこめて生きて償うことを望んだ。

弁護人「鈴香被告は死を持って償いたいと言っているが?」

証人「私は腹立たしかった! 逃げている。死んでしまえば楽。生きるほうが辛い。その辛さから逃げようとしている娘が腹立たしい…」

弁護人「鈴香被告がもし社会復帰したらどうするか?」

証人「私が抱きしめて引き取りたい。生活できるか分からない状況で生きる(ことになる)ので、(町の)ゴミを拾って…。それくらいしかできない」

弁護人「鈴香被告の償いの気持ちが弱まったらどうする?」

証人「周りは責める人ばかり。私は親だから叱咤(しった)激励していく」

午前11時55分。弁護側の証人尋問が終わると裁判長が休廷を告げた。母親は嗚咽(おえつ)をこらえながら退廷。一方、鈴香被告は最後まで涙ひとつ流すことなく、表情のない顔で傍聴席を見渡しながら法廷を後にした。再開は午後1時半から。

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