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(5)彩香ちゃん「大事な大事な娘だった…」

「彩香ちゃんが汚い」という証言に対して、証言台で反論する鈴香被告の母親。証人には、彩香ちゃんの体について思い当たる節があった。

証人「彩香は湿疹(しっしん)で、耳の後ろ…耳たぶの下や手とか、かさかさになってひび割れになる。それがあかと思われたのかもしれない」

弁護人「服も汚かったか?」

証人「私も買って与えているし、汚れたものではない。ただ、本人が古くなった洋服でも、気に入った物は墨とか絵の具とかが付いていても、いつまでも着ていることがあった」

さらに母親は、「鈴香被告は彩香ちゃんのしつけもきちんとしていた」と証言する。

証人「母子家庭の子だからとバカにされないよう、あいさつや食事のマナーは気をつけてやっていた」

弁護人「母子家庭の子だとバカにされないようにとは、本人(鈴香被告)が言ったのか?」

証人「はい」

弁護人「彩香ちゃんは実家ではどのような様子だったのか?」

証人「玄関前に車が止まると、バタバタ走ってきて『ババ、ただいま!今日、何のおかず?』と走ってくる。もう…家族だったんです…」

弁護人「畠山家では彩香ちゃんはどんな存在?」

証人「大事な大事な娘でした」

思わず涙で声をつまらせる証人。鈴香被告が交際相手を家に連れてきたときも、「彩香をかわいがってくれる人ならいいと思った」という証人にとって、彩香ちゃんは「家族の中心」だったようだ。

弁護人「2人(鈴香被告と交際相手)に気を使ったことは?」

証人「彩香を預かるから、交際相手と2人で遊びに行ってこいとか、たまに飲みに行きたいと言ったときは彩香を預かった。でも彩香は夕方になると、『お母さん、今どこにいるの?』と携帯に電話するような子だった」

鈴香被告は、母親には彩香ちゃんの養育についての悩みも打ち明けていた。

証人「彩香と友達との関係や、学校で悪口を書かれたという相談を聞いた。彩香は何も言わない。ババにだったら話すんじゃないか、聞いてほしい、という相談だった」

弁護人「鈴香被告が気をつけているなと思ったことは?」

証人「自分がたたかれて育ったことをこの年になっても忘れられないので、彩香にだけは手を挙げてそういう思いをさせたくない、と常々気を使っていた」

弁護人「暴力をふるっているところは?」

証人「見たことない」

弁護人「彩香ちゃんを邪険にしたことは?」

証人「ない」

弁護人「近所の人はいろいろと証言しているが?」

証人「彩香は家に来たら、彩香のお菓子を鈴香が食べたことまでしゃべる。鈴香に何かされたら、告げ口じゃないが、何でもしゃべるだろう」

弁護人「彩香ちゃんは鈴香被告のことをどう思っていたと思うか?」

証人「彩香はお母さん大好きです」

ただ母親は、鈴香被告が彩香ちゃんに触れるのが苦手だったという話は聞いたことがなかったという。

弁護人「近所の人は、冬に彩香ちゃんが玄関前のコンクリートにいたところを見たというが?」

証人「平成17年の冬は、自宅の前でも遭難するくらいの雪だった。彩香がそこにいたとしたら、鈴香は雪かきもしないといわれているのに、なぜ見えるんだろうと」

近所の人の証言を否定する証人。彩香ちゃんが着ていた白いコートが薄汚れていたことについても「もともと、こげ茶色のコートだった」と反論した。

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