(7)「隠れて私を驚かそうとしているのかと…」遺族の嗚咽漏れる
男性検察官は現場マンションのエレベーターの防犯カメラ画像を大型テレビに映し出しながら、東城瑠理香さんの姉に質問を続ける。
画面には瑠理香さんの姿が映っており、昨年4月18日午後7時31分と時間表示されている。起訴状などによると、瑠理香さんは帰宅直後の7時半すぎごろに玄関に押し入られており、被害にあう直前の映像ということになる。
検察官「これを見ると瑠理香さんが(自宅のある)9階で下りたのは午後7時31分であることがわかりますね」
証人「はい」
検察官「この映像の瑠理香さんが残された最後の生前の姿になりますか」
証人「はい」
傍聴席からは遺族のものと思われる嗚咽が漏れる。
検察官「あなたはこのとき、仕事を終えて(自宅の最寄りの)駅にいたのですか?」
証人「はい」
検察官「それからどこへ行きましたか?」
証人「近くのスーパーです」
ここで姉が映っているスーパーの防犯画像が示される。
検察官「防犯カメラに映っているのはあなたですか?」
証人「はい」
検察官「何を買うか決まってから店に入ったのですか?」
証人「いつもの癖で何か買う物がなかったのですが入りました」
検察官「店内で誰かに電話しましたか?」
証人「はい」
検察官「誰に電話しましたか?」
証人「瑠理香です」
検察官「何のためにですか?」
証人「いつものように何かほしいものがないか聞くためにです」
検察官「電話はつながりましたか?」
証人「つながりませんでした」
検察官「瑠理香さんは何をしていると思いましたか?」
証人「友達と電話をしていると思いました」
検察官「あなたはどうしましたか?」
証人「何も買わずに店から出ました」
再びマンションのエレベーター内の防犯カメラ画像が映し出される。今度は姉の姿が写し出されている。
検察官「映っているのはあなたですか?」
証人「はい」
検察官「画像を見るとあなたが9階で下りたのは午後8時42分58秒ですね」
証人「はい」
検察官「あなたの家の扉の鍵穴はいくつですか?」
証人「2つです」
東城さん宅の玄関扉の画像が示される。
検察官「あなたはどのように鍵を開けようとしたのですか?」
証人「2つとも鍵を回して開けようとしました」
検察官「扉は開きましたか?」
証人「開きませんでした」
検察官「どう思いましたか」
証人「瑠理香が鍵を1つしかかけてないと思いました」
検察官「あなたはどうしましたか?」
証人「2つとも鍵を元の位置に戻して、改めて鍵を開けました」
検察官「あなたはどう思いましたか?」
証人「鍵がもともとかかっていないと思いました」
スクリーンには事件直後の東城さん宅の玄関や洋室の写真などが次々と映し出された。それぞれの写真には無造作に置かれた瑠理香さんのブーツや弁当袋などが映っている。検察官は瑠理香さんが帰宅した形跡があることを確認する質問を続けた。
検察官「それ(散らかった室内)を見てどう思いましたか?」
証人「瑠理香が急いでトイレにでも行ったのだと思いました」
別の角度からの洋室の写真。写真右側には遺影が置いてあるのが見える。
検察官「誰の遺影が置いてあるのですか?」
証人「私たち孫をかわいがってくれた祖母です」
ここで姉は祖母と妹のことを思ったのか嗚咽を漏らした。
検察官「あなたはそれからどうしましたか?」
証人「瑠理香を探しました」
検察官「いましたか?」
証人「いませんでした」
検察官「どう思いましたか?」
証人「外で電話しているのだと思いました」
検察官「どうしてですか?」
証人「高校の時に人に電話を聞かれるのが嫌で外で電話をしていたことがあったからです」
検察官「あなたはどうしましたか?」
証人「パジャマに着替えました」
検察官「そのとき、あなたはベッドの上に何かが置いてあるのに気が付きましたか?」
姉はベッド上にタオルなどが散乱していたと説明した。
検察官「そのあと、あなたはどうしましたか?」
証人「冷蔵庫の中からヨーグルトを取ってきて、テレビを見ながら食べていました」
検察官「テレビ番組の内容は覚えていますか?」
証人「頭の中に入らなかったので覚えていません」
検察官「それはなぜですか」
証人「瑠理香がいなくて、気になっていたからです」
検察官「あなたはどうしましたか?」
証人「(瑠理香さんに)電話をかけました」
テレビ画面に当時に姉の使っていた電話の通話明細の写真が示された。
検察官「午後8時46分に0・6秒電話した記録が残っていますが、瑠理香さんとは話をできましたか?」
証人「話はできませんでした」
検察官「それからあなたはどうしましたか」
証人「クローゼットや洗濯機の中とかを探しました」
検察官「どうしてですか?」
証人「もしかして私のことを驚かそうとして隠れているのかと思ったからです」
検察官「室内に瑠理香さんの黒いバッグや携帯電話はありましたか」
証人「ありませんでした」
検察官「どう思いましたか?」
証人「全部持って外で電話しているのだと思いました」
検察官「あなたはどうしようと思いましたか?」
証人「探しに行こうと思いました」
検察官「パジャマ姿でですか」
証人「スプリングコートを羽織って探しました」
検察官「あなたはメールをしましたね」
そのときに姉が瑠理香さんに打った「何処にいる? 家鍵かけてないよ」とする携帯電話のメールの文章が画面に映し出された。検察官はここから、姉が事件に気付くまでの経緯を詳細に質問。姉は気丈に答え続ける。