(13)殴り、馬乗り…「性的に興奮した」とブーツ脱がす
検察官は星島貴徳被告が東城瑠理香さん宅に押し入ったときの状況に関する具体的な質問を始めた。事件の核心部分に入ってきただけに、傍聴席は消え入りそうな星島被告の小さな声に耳を傾ける。
検察官「家に押し入ったとき、東城さんは何をしていましたか」
星島被告「ブーツを脱いでいました」
検察官「東城さんは右手はどうしていましたか」
星島被告「右手は壁に手をつけていました」
検察官「左手はどうしていましたか」
星島被告「足下の方にあったと思います」
検察官「東城さんはあなたに気付くとどうしましたか」
星島被告「驚いて大声を上げました」
法廷の大型テレビの画面には星島被告立ち会いのもと、警察が作成した事件当時の再現写真が映し出された。東城さん役には小柄な男性捜査員が扮している。
検察官「このとき東城さんとは目が合いましたか」
星島被告「はい」
検察官「顔は覚えていましたか」
星島被告「あまりよく覚えていませんでした」
検察官「このとき以外に、東城さんの顔はいつ見たことがあったのですか」
星島被告「顔をきちんと見たのはこのときが最初で最後です」
被告は顔もよく知らない相手を襲ったのだった。
検察官「東城さんは何と叫んだのですか」
星島被告「『キャー、イヤー』と叫んでしました」
検察官「予想より大きな声でしたか」
星島被告「(叫ばれると)予想していなかったので比べようがありませんが、とにかく大きな声でした。本当に嫌だったんだなと思いました」
検察官「このまま叫ばれ続けたら『まずい』と思いましたか」
星島被告「はい」
検察官「東城さんが振り向いてからどうしましたか」
星島被告「もみ合いになりました」
ここで再び遺族のものと思われる嗚咽が法廷に響き渡った。
検察官「振り向いたとき、東城さんは両手を突き出してきたのですか」
星島被告「はい」
検察官「その手をどうしようとしましたか」
星島被告「振り払おうとしました」
大型テレビには星島被告が東城さんを襲う瞬間の再現写真が映し出された。
検察官「このように抵抗されることを想像していましたか」
星島被告「していませんでした」
検察官「予想以上に抵抗されて、あなたはどうしましたか」
星島被告「おとなしくさせようと殴りつけました」
検察官「どちらの手でどのようにですか」
星島被告「右手で拳を握って殴りました」
検察官「どこを狙いましたか」
星島被告「こめかみを狙いましたが、(顔面の)左前の上あたりに当たりました」
検察官「残虐に、力いっぱいでですか」
星島被告「全力で殴りました。手加減できませんでした」
検察官は星島被告がいかに女性相手に全力で暴行行為に及んだか、を強調。続けて星島被告が東城さんを殴った瞬間を再現する写真が示された。生々しいシーンである。
検察官「東城さんはどうなりましたか」
星島被告「抵抗を止め、うずくまるような姿勢になりました」
今度は星島被告が東城さん役に扮した再現画像が映し出された。
検察官「東城さんは、この写真のように床にしゃがみ込んだのですか」
星島被告「はい」
検察官「あなたはさらに殴ろうとしたのですか」
星島被告「抵抗がなくなったので、(殴るのを)止めました」
検察官「東城さんがしゃがみ込んだとき、916号室(東城さん宅)のドアは開いていましたか」
星島被告「閉まっていました」
密室での凶行ということが恐怖を駆り立てる。
検察官「あなたは次にどうしようとしましたか」
星島被告「(東城さん宅の)台所前の廊下に押し倒しました」
検察官「そしてどうしましたか」
星島被告「(東城さんが)うずくまるように体を丸めていましたので、ひざを伸ばさせるように足首を引っ張りました」
検察官「あなたはそのときどこにいましたか」
星島被告「(東城さんの)背中の上に乗っていました」
検察官「馬乗りになっていたということですか」
星島被告「はい」
東城さん役の捜査員に星島被告が馬乗りになっている写真が示された。
検察官「なぜ(東城さんの)足を伸ばそうとしたのですか」
星島被告「逃げると思ったからです」
検察官「足が縮んだ状態だと力が入りやすいと思ったということですか」
星島被告「はい」
検察官「この時点で東城さんは抵抗してないが、『まだ抵抗するのではないか』と思ったのですか」
星島被告「はい」
検察官「それからどうしましたか」
星島被告「ブーツを脱がせました」
一貫して伏し目がちによく聞き取れないほどの小声で質問に答える星島被告。大型テレビにはブーツを脱がすシーンの再現写真が映し出された。
検察官「なぜブーツを脱がせたのですか」
星島被告「興奮したからです」
検察官「何的にですか」
星島被告「性的にです」
検察官「このときに東城さんが抵抗する様子はありましたか」
星島被告「ありませんでした」
検察官「東城さんの息(遣い)はどうなっていましたか」
星島被告「息が上がっていました」
検察官「東城さんはなぜ抵抗したと思いましたか」
星島被告「おびえていたからだと思います」
検察官「なぜおびえていたと思いますか」
星島被告「見ず知らずの男がいきなり部屋に入ってきて、殴りつけられたからだと思います」
検察官「東城さんが「これ以上抵抗するとまた殴られる』と考えたからだとは思いませんでしたか」
星島被告「そこまで頭が回りませんでした」
検察官「ブーツを脱がせた後、あなたはどうしましたか」
星島被告「東城さんのコートを半分ずらし、両腕を後ろ手に縛って自由がきかないようにしました」
検察官「どうしてですか」
星島被告「逃げられないようにするためです」
検察官「逃げられないようにしてどうしようと思ったのですか」
星島被告「自宅に連れ去ろうとしました」
星島被告は東城さんを縛った上に、目隠しまでして逃走する意欲を奪おうと考えたことを明かした。検察官は東城さんの自宅内で、どのように東城さんを縛り上げたかなど具体的な質問を続けた。