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(6)検察官登場、テレビの取材ネタで鈴香被告の曖昧さ直撃

判決直後の土下座についての説明は、まだまだ続く。

弁護人「(土下座された)米山さんの気持ちは?」

鈴香被告「分かりませんでした」

弁護人「今は?」

鈴香被告「パフォーマンスと思われる」

弁護人「いつ思いました?」

鈴香被告「最近です」

弁護人「具体的には?」

鈴香被告「ここ2、3カ月」

鈴香被告は、判決後に弁護人を始め、いろいろな人からヒントをもらい、今の心境に至ったという。

弁護人「今振り返って、1回目の謝罪は?」

鈴香被告「足りないと思います」

弁護人「何が足りない?」

鈴香被告「そこまでは分かりません」

弁護人「どうすればいいと思いますか?」

鈴香被告「彩香、豪憲君、米山さんに対して、なぜ事件を起こしてしまったのか、なぜこういう結論に達してしまったのか、今は答えがでないけど、それを考え伝えていくことをしていきたいです」

次に弁護人は、捜査から公判まで、鈴香被告が事件の記憶を小出しにしていった理由を尋ねる。

弁護人「一番記憶がないとき、(事件の)あなたの記憶はどこまでありました?」

鈴香被告「その日、大沢橋にいったことだけ」

弁護人「その後は?」

鈴香被告「少しずつ周辺部分が思い浮かべられるようになってきました」

弁護人「なぜ記憶が回復したのですか?」

鈴香被告「事件に少しずつ向き合っていく気持ちがあったのかもしれません」

弁護人「豪憲君事件の記憶は?」

鈴香被告「ありました」

弁護人「最初は?」

鈴香被告「(任意同行で)警察署に言ったとき、遺棄したのは自分だけど、殺害したのは自分じゃないと」

弁護人「その後は?」

鈴香被告「(記憶が)戻ってきてないけど、自分がやったという自覚はありました」

弁護人「逃げていた?」

鈴香被告「思い出したくないけど、思い出したら自分がつぶれてしまうんじゃないかと思うけど、そこから逃げないで少しずつ事件と向き合って…」

弁護人「これから何をしなければならないですか?」

鈴香被告「事件から逃げ出さないで、しっかりと自分が言ったことを思い出して見つめていきたいです」

しっかりと思い出して見つめたいという割には、1審に比べ証言が後退している鈴香被告。これをどうとらえればいいのか。

さらに、弁護人は、控訴後に鈴香被告が豪憲君の両親から手紙をもらっていたことを明らかにする。

弁護人「控訴してから米山さんから手紙をもらいましたね?」

鈴香被告「はい」

弁護人「返信してませんね?」

鈴香被告「はい」

弁護人「理由は?」

鈴香被告「どう返答すればいいか分からなかったことと、その時々で記憶があいまいになるので、そのことを米山さんが知ったらまた傷つけてしまいます。それなら裁判ではっきりさせた方がいいと思ったから」

弁護人はその後、豪憲君の遺体を遺棄する際に、なぜ見つかりやすいところに置いたのかを再度確認して、午後2時40分、質問を終えた。

約30分間の休憩を挟み午後3時10分に法廷は再開。鈴香被告が緊張した面持ちでハンカチを両手で胸に抱いて入廷し、いよいよ検察側の質問に入った。休廷前に弁護側は「検察官にも誠実に」と助言したが、実行されるのか。

検察側はまず、彩香ちゃん事件の後の記憶があいまいとする鈴香被告に、テレビなどの取材録画を通じて反論を加えた。

検察官「(彩香ちゃん事件後の)4月の中旬ごろ、(テレビ局の取材を受け)生放送がありましたね?」

鈴香被告「いいえ」

検察官「なかったですか?」

鈴香被告「豪憲君事件後までなかったです」

検察官「録画が残っているが? 4月19日にテレビ局の取材を受けていないですか?」

鈴香被告「…受けました」

検察官「テレビ朝日系列のAAB放送…」

鈴香被告「そうなんですか?」

検察官「ご存じないですか? 番組名は?」

鈴香被告「『TVのチカラ』」

検察官「『スーパーモーニング』は?」

鈴香被告「いいえ」

検察官「4月19日の取材で(彩香ちゃん事件当日の)4月9日夕方の行動を説明している。『(午後)6時半を過ぎても彩香が戻らないので近所を訪ね歩いた』と」

鈴香被告「(か細い声で聞き取れず)…話したことないです」

検察官「番組名は覚えてない?」

鈴香被告「“スッ”…。えっと。○○リポーターが出ていたのは覚えてるんですけど」

検察官「いま『ス…』といいかけたが『スッキリ!!』では?」

鈴香被告「はっきりしないんですけど」

検察官はテレビ局の録画を武器に、鈴香被告の記憶のあいまいさを突いていく。

⇒(7)検察官の追及に再び連発「覚えてない」