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(7)鈴香日記「彩香に比べ罪悪感ない」

豪憲君の父、米山勝弘さんは、鈴香被告が公判が始まってから書いていた衝撃的な日記の内容を証言した。検察側は、この日記について、さらに詳しい内容を明らかにしていく。

検察官「平成19年10月21日付の日記ですね。『豪憲君殺害について、後悔や反省はしているが、彩香に比べて罪悪感はほとんど感じない。米山さんはなんで怒っているのかわからない。まだ(子供が)2人残っているではないか。今まで何の不幸もなく生きてきたのがうらやましい。私とは正反対だ』。これを読んでどう感じたか?」

証人「人ではない…。人の心、親の心を持ち合わせていない。子供をモノとしか見ていない。救いようのない人間だ。死刑以外にない」

検察官「2人残っているという言葉については?」

証人「普通の親なら、1人1人がかけがえのない存在だ」

検察官「豪憲君がいないことを他の2人で埋められるか?」

証人「子供を持つ親なら理解できると思うが、埋められるものではない」

検察官「鈴香被告は日記の記載の後、月末の被告人質問で反省の言葉を口にしていたが、本心だと思うか?」

証人「うわべだけだ。サル芝居だ。全く何も感じない」

検察官「被告人質問であなたの著作を遺影代わりに置いて供養していると言っていたが、それを聞いてどう思ったか?」

証人「形だけのパフォーマンスだ。本心を書いた手紙がある以上、何を供養するんだ、と。自分が供養しているとか、償う気持ちがあるというパフォーマンスだ」

検察官「パフォーマンスに豪憲君を使われることをどう思う?」

証人「強い憤りを感じる」

検察官「死刑を望むという発言はパフォーマンスに見える?」

証人「公判で見てきた内容を客観的に見れば、当然、素直に言っているようには見えない」

検察官「鑑定人の出した平成19年11月6日付けの日記には、『今すぐ家族の元に帰れなければ死にたい』と書いてあるが?」

証人「(鈴香被告の姿が)一番、正確に出ている。人の気持ちがわからず、死にたいというのもその程度の気持ち。だだっ子のようだ。(鈴香被告は)その程度の浅はかな気持ちでしかないんです」

証人は、こみあげるやりきれなさを苦笑いに変えた。鈴香被告はぼんやりと前を見ている。

検察官「豪憲君は小学校入学を楽しみにしていた」

証人「はい」

検察官「これからが人生で一番楽しいときだ。それを殺されたことについて、父としてどういう思いか?」

証人「豪憲は7歳という短い生涯だった。遺体を発見したときの残酷さは頭に焼き付いている。被告はうわべだけの反省をしているが、豪憲の最期が焼き付いている限り、凶悪犯である被告を絶対に許すことはできない」

検察官「豪憲君を思い出すたび、痛ましい姿も思い出されるわけだ」

証人「はい」

検察官「鈴香被告にはどういう処罰を望むか?」

証人「自分の怒りに任せて簡単に子供を殺す人間が生きている社会ではいけない。死刑に…厳罰に処して頂きたい」

検察官「仇討ちができない以上、死刑を望む?」

証人「当然です」

検察官「鈴香被告が生きているのは許し難く耐え難い?」

証人「はい」

検察官「亡くなるときの豪憲君はどんな思いだったと思うか?」

証人「友達のお母さんからこんなことをされ、想像を絶する苦しみ、恐怖の中で息絶えたと思う」

検察官「親類の人はなんと?」

証人「機会あるごとに話すが、皆、口をそろえて死刑にしてもらわなければと言っている。決して死刑になっても許すことはできない。魂ある限り、私たち家族は許すことができない」

検察官「豪憲君はどんな気持ちでいると思うか?」

証人「私も二男だが、豪憲は姿、形、性格まで私にそっくりだった。豪憲も私たち家族と同じように死刑を望んでいると思う」

午後12時05分、勝弘さんは、検察側の証人尋問を終えた。証言台を立った勝弘さんに向かって、鈴香被告は座ったまま一礼した。午後1時半からは、母親が証人として証言する。

⇒(8)母親が証言台へ 被告とは「肌が合わない」