(1)「その見取り図作成は忘れました」 証人の警察官が正直に“告白”

東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第5回公判が11日午前、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった。前回に引き続き、公判では事件被害者らの証人尋問が行われる予定だ。「オタクの聖地」と呼ばれた秋葉原を恐怖に陥れたあの事件の詳細が、どこまで明らかにされるか、注目される。
前回までの公判では、事件の目撃者2人、被害者2人が証言台に立ち、事件当時の様子を生々しく語った。この日の公判では、事件の現場捜査を担当した警察官2人と被害者3人が新たに証人として出廷する。
開廷予定3分前の午前9時57分。104号法定にはすでに村山裁判長と2人の裁判官、検察官、弁護人もそろっている。裁判官席に向かって左側の扉から加藤被告が入廷してくる。黒いスーツに白いワイシャツ姿。被害者や遺族が座っている傍聴席の方に向いて頭を下げ、弁護人の前の長いすに座った。
起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、東京・秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか10人にけがを負わせた、などとしている。
午前9時58分、村山裁判長が開廷を宣言する。
裁判長「それでは開廷します」
1人の証人が入ってくる。まずは事件当日、現場の実況見分を行った男性警察官だ。村山裁判長に促されると、自分の名前を答え、「良心に従い…」と宣誓した。
裁判長「宣誓の趣旨はお分かりですね」
証人「はい」
警察官として、法廷でウソの証言をすると偽証罪に問われることは当然知っているのだろう。一応、裁判長が改めて説明するが、証人はじっと聞いている。それが終わると、検察官が立ち上がり、質問を始めた。
検察官「証人は警視庁に所属していますか」
証人「はい」
検察官「(秋葉原を管轄する)万世橋警察署に勤務していたことはありますか」
証人「はい」
検察官「いつですか」
証人「平成19年10月25日から平成21年7月17日までです」
検察官「刑事組織犯罪対策課に所属していましたか」
証人「はい」
検察官「事件捜査で実況見分に加わりましたか」
証人「はい」
検察官「何をしましたか」
証人「現場の写真撮影を担当しました」
証人が平成20年6月8日の事件後に、現場の実況見分を行った警察官であることを確認した上で、検察官が詳しい質問を始める。
検察官「では証拠提出済みの写真をお見せします」
裁判官には複数の写真が配布されるが、傍聴人席からは見えない。
検察官「これらは証人が撮影した写真で間違いありませんか」
証人「はい、間違いありません」
法廷内の大型モニターに、事件現場となった秋葉原の交差点の地図が映し出される。検察官は、写真の撮影位置と写っている被害者の位置を、証人に確認していく。
検察官「この写真は、あなたがどこから撮影したものですか」
証人「交差点の南辺りから、(大型家電量販店)ソフマップに向けて撮影したものです」
検察官「あなたが撮影した位置を丸(で囲った)2、被害者の位置を四角(で囲った)2、とお書き入れください…」
検察官の指示に従って、次々と地図に番号を書き入れていく証人。検察官は、続いて現場見取り図の確認を始める。
検察官「この現場見取り図は、どのように作成されたものですか」
証人「(警視庁)本部捜査員を、私が補助して作成したものです」
写真と一緒に、複数の現場見取り図が証人や裁判官に配られているようだ。ただ、傍聴席からは見えない。
検察官「この見取り図は、どの写真撮影位置で作成したものですか…」
今度は検察官は、現場見取り図と作成位置を確認していく。
検察官「この写真の見取り図はないのですか」
証人「それはありません」
検察官「なぜ、ないのですか」
証人「それは作成を忘れてしまいました」
作成ミスを認めた警察官。検察官は淡々と、さらに見取り図の作成位置などを確認した上で、見取り図の作成を忘れた写真についても追加質問した。
検察官「見取り図のないこの写真に写っている被害者は、誰ですか」
証人「Bさんと聞いております」