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(6)「脊髄切れて足の感覚ない」「痺れも残る」…赤裸々に語る被害者

引き続き、検察官は加藤智大被告にナイフで刺され、下半身に重い障害が残った被害者、Hさんの供述調書を読み上げる。検察官の太い声が法廷に響きわたる中、加藤被告は固い表情のまま聞き入っている。

検察官「(犯人の行動は)自分勝手で自己中心的で腹が立って許せません。とりあえず、仕事があって家があって、それなりの生活ができて、明日食べるのに困るようなことはなかったのに、どうして自分だけ不遇だと思ったのか」

「私は今も下半身がまひしています。犯人に殺された方を思うと、命を奪われなくてよかったと思います。当たり前なのに、生きていてよかったと思います」

「なるべくプラス思考でいこうと思っています。犯人を憎んで、私が嘆けば体が回復するのなら、私は憎み、嘆きます。しかし…」

「犯人のことを考え、憎むのは無駄でしかない」。Hさんはそう繰り返した。加藤被告は背中を丸めたまま、うつむき加減で聞き入っている。表情にほとんど変化はみられない。

検察官「私はもし、(身体が)良くなったとしても犯人がいるような世の中では、一生気持ちが安らぐことはありません」

「私が何も言わなくても犯人はもちろん死刑になると思います。ならないとおかしいと思います。そうでなければ、同じような事件が起き、私のような目に遭う人が増えるだけです」

Hさんの供述調書は、厳刑を望む言葉で締めくくられていた。

裁判長「それでは、引き続いて証人尋問を行います。入廷の準備をお願いします。被告は(座っている)位置をずらして…」

法廷に入るHさんが傍聴席から見えないよう、遮蔽(しゃへい)措置の準備をうながす村山浩昭裁判長。着席する位置を少しずらすよう促すと、加藤被告はうなずきながら立ち上がり、座る位置をずらした。

裁判長「椅子(いす)におかけください。それでは証人に少しお尋ねすることになりました。まず宣誓の文を読み上げてください」

証人「はい。良心に従って真実を述べ…」

宣誓文を読み上げるHさん。事件の被害に遭い、身体に重い障害を負っている。

裁判長「この裁判では、あなたを『Hさん』とお呼びしております。身体の関係など、不都合なことがあればいつでもおっしゃってください。それでは…」

男性の検察官が立ち上がり、証人尋問を始める。

検察官「よくお越しくださいました。今日はどのように裁判所にいらしたのですか」

証人「電車に乗るのが無理なので。検察の方に車で連れてきてもらいました」

検察官「電車では、どのような不都合があるのですか」

証人「身体が不自由なので、満員電車に乗ることはできません。また、常にオムツをしているので、蒸れたり、においを気にすると、乗ることができません」

検察官「先ほど入廷されるところを見ていると、足を引きずって、つえを使っていらっしゃるようでしたが。お体は…」

証人「下半身、左足なのですが、足首が動きません。歩くときダランとなってしまうので装具をつける必要があります。触ったときの感覚はなく、しびれた状態です。また右足のひざから下、お尻全体、前の方にもしびれがあります」

検察官「それは、事件で負ったけがが原因ですか」

証人「そうです」

検察官「長時間座ると、辛いですか」

証人「何かに集中していると紛れることもあるのですが…。急にしびれが来たりすることがあります」

検察官「左足の方がよくないのですか」

証人「脊髄(せきずい)の一部が切れて。左足首が動かず、感覚がありません」

検察官「右足も良くないのですか」

証人「右足も最近骨折して入院していました」

検察官「骨折したのはなぜですか」

証人「昨年末、自宅で足が引っかかってしまいました。足の付け根、腰の所を骨折しました」

公判前、地裁からは車いすを使っているという説明があったHさん。傍聴席からは見えないが、入廷時にはつえを使っていたようだ。加藤被告は遮蔽のカーテン越しに、うつむいたまま。手をひざにつき、表情に変化はない。

検察官「昨年末は車いすを使っていましたか」

証人「使っていません。いわゆるT字のつえを使っていました」

検察官「つえがないと、歩行は辛いですか」

証人「外出するときに辛いです」

検察官「事件当日のことを聞いていきたいと思います。目撃の状況と被害の状況についてです。事件を見た状況は覚えていますか」

証人「はい。覚えています」

検察官「あなたは現場の交差点を横断していましたね」

証人「はい」

検察官「中央通りはすでに歩行者天国になっていましたか」

証人「はい。なっていました…」

ゆっくりとした口調でHさんへの質問を続ける検察官。加藤被告は表情を変えずに、耳を傾けていた。

⇒(7)「腰に違和感、右手を回すと血が…」刺された瞬間の記憶は「ない」