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(4)「地獄のような夫婦生活」裁判長も同情 「立ち直って」と説諭

責任能力についての判決理由はまとめに入った。祐輔さん殺害、死体損壊・遺棄のそれぞれについて、責任能力があったのかどうかを述べていく。歌織被告は相変わらずじっと前を見つめたままで、動きは見られない。

裁判長「本件殺害行為は被告の意思に基づいて行われたものと認められる。殺害行為時の精神障害は、現実感の喪失や強い情動反応により犯行の実現に影響を与えていたものの、責任能力には影響を与えるものではない」

「死体損壊・遺棄については、被告は当時、幻聴や幻視など一定の意識障害があったが、動機の形成にはまったく関係がない。犯行は被告の意思や判断に基づいて行われたものと認められる。以上から被告は本件各犯行のいずれについても完全責任能力を有している」

裁判長は、歌織被告が犯行時に精神障害を発症していたことを認めながらも、責任能力に影響を与えるほどのものではなかったとして、殺害行為、遺体損壊・遺棄のいずれについても完全責任能力を認めた。その後判決は、量刑の理由について言及する。なぜ懲役15年と判断したのか、その理由について述べていく。

「殺人に至るまでの経緯においては、被告に同情の余地が相当ある。被害者から暴行を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。被告が言うようにまさに地獄のような夫婦生活を送っており、絶望的な気持ちになり、殺意を抱いたことに影響していることは否定できない」

祐輔さんから配偶者間暴力(DV)を受け続けていた歌織被告の事情に配慮した上で、犯行の残虐性について断罪する。

「しかし、こうした経緯は、被害者を殺害し、死体を損壊し遺棄したことを正当化する理由にはならない。被害者は会社での昇進を間近に控え、30歳の若さで生命を奪われ、その無念さは察するに余りある」

「被告は警察に捜索願を出す際などに数々の隠蔽(いんぺい)工作をしている。中でも、被害者の安否を心配していた被害者の両親に、被害者を装ったメールを出した行為は卑劣かつ自己中心的な行為である。遺族が被告に厳罰を求めているのも当然で、被告のために酌むべき事情を最大限に考慮しても、主文の刑をもって臨むのが相当と判断した」

河本雅也裁判長の判決読み上げが終わった。歌織被告は、右手に持ったハンカチを顔に当てながら、顔を上げて裁判長を見つめている。判決読み上げを終えた河本裁判長は諭すように歌織被告に話しかけた。

「あなたが過去に受けた暴行などは認めましたが、刑事責任には影響しないと考え、懲役15年としました。分かりましたか」

判決主文と、その結論に至った理由を再度簡単に説明する河本裁判長。歌織被告は小さくうなずいた。

「控訴できますが、自分が行ったことについてじっくり考え直してください。裁判所としては、自分を見つめ直す機会を得て、立ち直ってくれると信じています」

裁判長の言葉に深々と頭を下げる歌織被告。午前10時27分、判決の言い渡しが終わった。歌織被告は立ち上がり、刑務官に付き添われ、法廷を後にした。その間、傍聴席を見ることもなく、表情に変化も見られない。歌織被告は判決をどのような気持ちで受け止めたのか。法廷を出る後ろ姿を見届けても、最後までうかがい知れなかった。

⇒判決要旨(1)歌織被告は「逃れたいと、とっさに殺意」