第4回公判(2008.8.28)
(1)異例の弁論再開、歯科医証言に検察官ぶぜん
未公開株を取得額の3倍で知人男性に売り、3億7000万円をだまし取ったなどとして、詐欺と恐喝未遂の罪に問われたタレントの羽賀研二被告(47)=本名・當真(とうま)美喜男=と、恐喝未遂罪に問われたプロボクシング元世界王者、渡辺二郎被告(53)の公判が28日、大阪地裁(中川博之裁判長)で開かれた。弁護側が新たに申請した羽賀被告の知人の男性歯科医への証人尋問と被告人質問が行われた。
公判は5月8日に検察側が羽賀被告に懲役8年、渡辺被告に懲役4年をそれぞれ求刑して結審した。7月15日に判決が言い渡される予定だったが、弁護側が新たに証人申請したため異例の弁論再開となった。
公判の主な争点(詐欺罪)は、羽賀被告が医療関連会社の未公開株300株を被害者の知人男性に売った際、1株40万円で入手したことを告げ、知人男性にその認識があったかどうか。弁護側は「知人男性は株が値上がりすると信じ、(羽賀被告の)仕入れ価格の3倍と知った上で購入した」と主張。一方、検察側は、羽賀被告が知人男性に対し、上場すれば何十倍にもなると購買意欲をあおり、もともと1株120万円で入手したものと誤信させ、差額をだまし取ったとしている。
弁護側は、知人男性が仕入れ価格の3倍と知った上で購入したことを裏付けるため、羽賀被告の知人の男性歯科医を証人申請した。歯科医は、羽賀被告が知人男性に未公開株を売った平成13年ごろ、入手価格の3倍で知人らに譲っていたことを聞いていたとされる人物。羽賀被告自身も忘れていたが、5月8日の公判結審後、数年ぶりに会った際、当時歯科医に株の話をしたことが判明したという。
午後1時20分、703号法廷。渡辺被告が先に、やや遅れて羽賀被告が入廷した。羽賀被告はこれまでと同様、黒いジャケットに黒いパンツ姿。手には白いハンカチを握り、歯科医の証人尋問に聞き入った。
弁護側は歯科医が糖尿病を患って現在目が見えなくなったことや、羽賀被告と知り合った経緯を質問した。
弁護人「羽賀被告とはいつどこで知り合った」
証人「10年ぐらい前に東京のカフェで」
弁護人「その後は」
証人「羽賀被告の歯の治療をしました」
弁護人「羽賀被告とお金の貸し借りは」
証人「ありません」
弁護人「医療関連会社の株の話を聞いたのは羽賀被告からか」
証人「はい」
弁護人「いつ、どこで」
証人「そのカフェで8年ぐらい前に」
弁護人「どんな話でした」
証人「先生、すごいいい株があると。いい株と聞いて値段を聞きました」
弁護人「どんな会社の株か具体的に聞いたのか」
証人「どんな会社かは聞いていない。とにかくすごいいい株だと」
弁護人「購入を勧められたのか」
証人「いい株というのでどのくらいで買えるか聞きました」
弁護人「羽賀被告はなんと」
証人「1株40万円だけどその値段では売らないと。120万円で売るという話でした」
歯科医は争点の核心部分を証言し、羽賀被告は時折うなずく。一方で検察官はぶぜんとした表情で歯科医を見つめた。
弁護人「それを聞いてどう思った」
証人「40万円なら10株ぐらい買おうと思いましたが、120万円なら予算オーバーなので買うに至りませんでした」
弁護人「3倍なのはどうしてだと」
証人「羽賀さんが持っている株ですから」
弁護人「希少価値があると」
証人「そうだと思いました」
弁護人「他には何と」
証人「上場したらすごいもうかると」
弁護人「40万円なら買うと話したのか」
証人「いえ、直接言ったか覚えていません」
弁護人「他に買った人を知ってますか」
証人「(被害者の)知人男性とカフェの社長です」
弁護人「どうして知った」
証人「カフェに来る人たちとの話で」
弁護人「知人男性が買ったのも知っていた」
証人「羽賀被告に知人男性を紹介されて、この方が買ったと聞いて知りました」
弁護人「知人男性を紹介されたのはいつごろ」
証人「8年ぐらい前」
弁護人「3人が会ったときにどんな話をした」
証人「株の話を漠然として。僕も買いたいので、40万円の株を120万円で買ってもうかるのかって聞いた」
弁護人「そしたら」
証人「上場したら損はないと。何十倍ももうかると言っていた」
弁護人「他には」
証人「その人は何億という単位で買ったと」
弁護人「もともと40万円って言っていたのですね。間違いないですか。絶対に間違いないですね」
証人「はい」
弁護人は、羽賀被告が1株40万円で入手したと言っていたことを入念に確認した。