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(2)「誘導は一切なかった」

続いて弁護側が反対尋問を始める。畠山鈴香被告が実況見分で話した通りに調書が作られているか、犯行状況の再現に無理がなかったかを確かめようとしているようだ。まずは実況見分の前に証人がどの程度取り調べの状況を知っていたかを尋ねる。

弁護人「今回の実況見分を担当することはいつ指示されたのか?」

証人「3日ほど前に見分をやる予定と聞いていたが、正式には前日に聞いた」

弁護人「作成前に現場に行ったか?」

証人「特別に行ってない」

弁護人「事前に供述調書は読んだか?」

証人「警察の供述調書は読んだ」

供述調書に「1、2回ざっと目を通した」という証人。しかし、弁護側から取り調べの方法について抗議を受けていたことや、鈴香被告の供述が揺れていたことは知らなかったという。

弁護人「実況見分を始める前に、鈴香被告の同意を得たか?」

証人「『大沢橋であなたと(長女の)彩香ちゃんがどのような状態だったか、再現していただきます。よろしいですか』と聞いたら、鈴香被告は『はい』と」

弁護人「再現中に県警の人たちは話はするのか」

証人「しない。じっと見つめているだけだった」

弁護人「欄干に乗った彩香ちゃんの姿勢を再現するとき、鈴香被告以外に誰かから指示がなかったか」

証人「なかった」

実況見分での鈴香被告が話した内容と調書内容が異なったときは、実況見分をそのまま続けることや、取調官が口を挟むことは一切ないなどと説明する証人。弁護側は、徐々により具体的な状況の確認を求めるようになる。

弁護人「調書を見ると、手の動作はあるけど、足の動作の説明はないが、これは写真の通り(でいいの)か」

証人「その通り」

弁護人「(橋の)欄干に手をついている写真があるが、ここには手をついていないという反論などはなかったか」

証人「ない」

弁護人「こうはしていないのか、とかは」

証人「一切ない」

証人は、あくまでも鈴香被告に対する誘導や、鈴香被告の反論はなかったと言い切る。

⇒(3)「重点を置いたのは彩香ちゃんの落ち方」