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(14)覚醒剤の隠語を使い「エスが好きな女いないか」 クスリまみれの生活露呈

飲食店従業員、田中香織さん=当時(30)=に対する保護責任者遺棄致死などの罪に問われている元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判第6回公判は、被告人質問が続いている。押尾被告は男性検察官の質問に淡々と答えていく。

検察官「あなたと泉田さんがMDMAをアミノ酸と呼ぶようになったのはいつですか」

被告「彼と初めて会ってちょっとしてから、お互いのことを話しまして、違法薬物で捕まったことがあるって話になって、『記録として残るから暗号化した方がいい』ってなって。でも、何月かって言われても分かりません」

泉田さんとは、押尾被告にMDMAを譲渡し、実刑判決を受けた泉田勇介受刑者(32)のことだ。今回の裁判でも証人として出廷している。

検察官「今の証言は途中まで泉田さんと一緒ですね」

被告「そうっすか」

押尾被告は投げやり な感じで一言答えた。

検察官「今まで何回、泉田さんからMDMAを譲り受けましたか」

被告「3回です」

検察官「1回目はいつですか」

被告「思いだせません。…あ、4月と5月」

検察官「4月に1回、5月に1回、最後は7月31日?」

被告「はい」

検察官「量的には前の2回(4月と5月)はどのくらい?」

被告「量は…5月は5個」

検察官「5個というのは? 何を5個?」

被告「透明のカプセルです」

検察官「4月は?」

被告「4月は小さいビニール袋にあったMDMAといわれているもの」

検察官「粉末?」

被告「はい」

押尾被告は泉田受刑者から、4月は約17万円、5月は無料でMDMAをもらったという。

検察官「今回は?」

被告「30万か、35万円」

検察官「あなたは(泉田受刑者の)言い値で買っていたのですか」

被告「彼が言う値段をそのまま払っていました」

被告「私は泉田さんを本当にすごい信頼していたんですよ。彼のお母さんが治療費が必要で、お金をかき集めて、何百万(円)て渡したり、彼を信用していましたから」

押尾被告は、まくし立てるように、一息で話した。

検察官「アメリカで違法薬物を購入したときには、かなり金額をこだわっていますよね?」

検察官が、アメリカでの押尾被告のメールのやり取りが分かる証拠を示した。法廷内の大型モニターにも映し出される。

検察官「『ところで、合計いくら。私がぼられないために』『1錠あたり10、計200』。これはどういうことですか」

押尾被告「1錠あたり10ドルということです」

検察官「MDMAは1錠あたり重さがいくらあるか知りませんか」

被告「はい」

検察官「あなたは重量と金額の対価を見ていないんですか」

被告「はい」

検察官「結構です」

押尾被告は、正面の裁判官席を見据えたままだ。

検察官「今、アメリカのメールを見てもらったので、もう少し聞かせてください。7月25日、現地時間未明、どんなメールのやり取りをしたか、記憶にありますか」

被告「まったくないです」

検察官がメールの内容を書かれた資料を示した。

検察官「ここに、あなたが送ったメールで『エスが好きな女いないか』『男が気絶して病院に行った』ってありますよね?」

被告「分かりません」

「エス」は覚醒剤を指す隠語だ。

検察官「(気絶して病院行ったのは)クスリじゃないんですか」

被告「クスリじゃないです」

検察官は、合成麻薬TFMPPの話に質問を移した。押尾被告は、TFMPPを所持した罪でも起訴されている。

検察官「TFMPPの話は、あなた自身が粉末にしてカプセルに入れたことはないですか」

被告「ないです」

検察官「MDMAをかじったことはありますか」

被告「あります」

検察官「味は?」

被告「味ですか」

検察官「すごく苦かったんじゃないですか」

被告「苦いっちゃ苦いですね」

検察官「苦い薬を飲むときには何を使いますか」

被告「苦い薬…。そのまま飲みます」

検察官「一般的に苦い薬を飲むときには何を使いますか? オブラートとかカプセルを使うんじゃないですか」

被告「しない(使わない)と思います」

検察官は8月2日、田中さんが六本木ヒルズに来た当時の状況を尋ね始めた。

検察官「田中さんが来てから、トータルでMDMAを5錠飲んだと言っていましたよね。もう1度確認しますが、最初に田中さんが1錠、あなたが2錠。時刻は?」

被告「(部屋に)入ってから10分ごろ」

検察官「午後2時50分のちょっと前でよろしいですか」

被告「はい」

検察官「4時ごろにもう1錠飲んで?」

被告「はい」

検察官「セックスをして、休憩をして5時10分に(元妻の)矢田亜希子さんからメールがきて返しましたね。この前に2錠飲んで、これで5錠目ですよね。どこで飲んだんですか」

被告「寝室です」

検察官「矢田さんのメールはどこで受け取ったのですか」

被告「ソファか寝室です」

検察官「メールをしている間、田中さんはどこにいたのですか」

被告「寝室やリビングで踊っていました」

検察官「あなたはどこにいたんですか」

被告「シャワーの後にソファに行きまして、充電器が置いてあるので、メールを送って、寝室に行きました」

検察官「2度目のセックスは正確な時間が分からないって言っていますね? でも、8月2日はあなたはすごく時間を気にしていたんじゃないですか」

被告「気にしていました。次の次の日にレコーディングがありまして、アレンジしなきゃいけなくて、その予定が入っていました」

検察官が個人予定表と呼ぶ資料を示したが、法廷内の大型モニターには映されない。

検察官は、押尾被告と田中さんのメールのやり取りを明かした。

検察官「あなたと田中さんは、せいぜい6時か7時までしか一緒に動けなかったんじゃないんですか」

被告「はい、そうですね」

検察官「あなたと田中さんの間には、到着が2時半で、せいぜい6時半くらいまでしか、ドラッグセックスをやるにしてもできない状況だったわけでしょう?」

被告「はい」

検察官「あなたは時計が、時計がって言っているけれど、(田中さんが)おかしくなるまでは、だいたい何時か(時間を)気にしていたんじゃないですか」

被告「していないです」

田中さんに救命の可能性があったかどうかが裁判の最大の争点だ。弁護側は「田中さんは急死で、救急車を呼んでも救命可能性は低かった」と主張している。

「当日の正確な時間を覚えていない」と主張する押尾被告に対し、検察官は尋問を重ねていく。

⇒(15)通報しなかった理由問われ 「自分のこと考えていた」「クスリの発覚嫌だった」