第35回公判(2012.3.13) 【最終弁論】

 

(7)度重なる記憶喪失も弁護側「睡眠薬ではなく発作」 長時間弁論に木嶋被告顔赤らめる

木嶋被告

 首都圏の連続不審死事件で殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判(大熊一之裁判長)は、弁護側による最終弁論が続けられている。弁護側は、木嶋被告が問われている3件の殺人事件を中心に、検察側の主張への反論を行っている。

 午前の終盤から、千葉県野田市、無職、安藤建三さん=当時(80)=殺害事件に関する主張が展開されている。

 起訴状によると、木嶋被告は平成21年5月、安藤さんに睡眠導入剤を飲ませて眠らせた上で、コンロを使って練炭に火を付けて殺害したとされる。

 安藤さんの自宅は全焼している。検察官は木嶋被告が駐車した安藤さん宅近くのスーパーの防犯カメラ映像を元にするなどし、木嶋被告の犯人説を論じた。

 また、前日の論告求刑公判では、動機にも言及した。検察側は、木嶋被告が安藤さんからカードの無断使用などを法廷闘争も辞さない強い文言で詰問されたことに恐怖を覚えたことも一因と指摘した。

 さらに、安藤さんが騒いでいた自宅の絵画が盗まれたとするものも、木嶋被告が無断で持ち出し売ろうとしていたと指摘、さらに事件当日は安藤さんの多額の年金支給日で、木嶋被告が根こそぎ奪おうとして殺害したとした。

 もちろん弁護側は反論する。まず絵画。これについては、弁護側は安藤さんからもらったものだと主張する。

弁護人「(木嶋被告に)あげたこと自体を忘れてしまった可能性があります」

 検察側は、木嶋被告にも安藤さんは絵画が盗まれたと相談していたが、木嶋被告は返答していない。この点からも、検察側は木嶋被告が無断で持ち出したことを物語っているとする。

弁護人「確かに木嶋さんにも話しており、自分が持っていることでおかしいとは思わなかったのかとするかもしれません」

「ただ、絵は何枚かあるかもしれず、自分が持っているものと(盗まれたと騒ぎ立ているものが)同じとは思いませんでした」

「どのような絵が何枚あるか分からない。数枚あってもおかしくない」

 弁護人は、ことごとく検察官の主張に疑問を投げかけていく構えだ。

 さらに、弁護側は細部の状況にも言及し、いったん総括する。

弁護人「(木嶋被告は婚活サイトを通じ)出会った当初から(安藤さんが)年金暮らしだということは知っていました。決して多額の年金が入る予定だったということも交際するまでは知りませんでした」

「高校のときにボランティアをしていて、お世話が好きということで、もちろん結婚を前提に交際していたわけではありません」

「すれ違いからギクシャクした関係になる時期もありましたが、それだけのことで、(事件を起こす)動機にはなりません」

 弁護側は、さらに検察側が、木嶋被告に安藤さんが睡眠薬を飲まされ、眠らされたすき、無断でカードを使用されたことも度々あったとする点にも言及していく。安藤さんは、記憶がなくなった際、何があったのかを木嶋被告に尋ねたりもしていた。記憶喪失は睡眠薬の影響だったのか。

弁護人「一過性の発作と考えられます」

 弁護側は医師などの所見を挙げ、発作論を肉付けを続けた後、休憩に入った。

 長時間に及ぶ弁護側の最終弁論。木嶋被告は少し赤らめた顔で、意見を述べ続ける弁護人の顔を、ぼんやりと見つめいている。

⇒(8)練炭燃やしたマッチ「なぜ持ち去らなければ」可能性指摘し続ける弁護側 木嶋被告は無表情