初公判(2012.1.10)
(7)「自殺する人わざわざ車の鍵捨てない」鑑識のベテラン証言

首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけ男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判の初公判(大熊一之裁判長)は、休憩を挟んで再開された。
平成21年8月に埼玉県富士見市の駐車場で駐車中のレンタカーの車内で練炭を燃やし、薬物で眠らせた交際相手の大出嘉之さん=当時(41)=を一酸化炭素中毒で殺害した事件についての審理が続く。
1人目の証人が出廷した。証人は大出さんの遺体が発見された際に現場に急行した東入間署刑事課鑑識係の男性警察官だ。うそをつかないという宣誓後、着席し、裁判長の方をまっすぐ見ながら検察官の質問に答えていく。
検察官「大出さんの遺体の発見現場に立ち会いましたね」
証人「はい」
検察官「これまで変死体の鑑識経験は?」
証人「5年半の間に400〜500人程度あります」
検察官「現場でまず何をしますか」
証人「指紋や足跡、DNA採取などを行い、事件性の有無について調べます」
検察官「現場の状況についてお聞きします」
現場の写真を大型モニターに映し出しながら、発見時の状況について詳しく質問していく。
大出さんの遺体はレンタカーの後部座席で見つかった。すべてのドアは施錠されていた。助手席にはコンロがあり、練炭も。だがマッチを擦ったとみられる箱はなく、不審に思ったという。
証人「車外や周辺を同僚警察官と捜索しましたが、見当たりませんでした」
検察官「遺書はありましたか」
証人「自殺をする場合は遺書を残したり、死ぬ直前に家族などに電話したりするのが一般的。だが、車内に遺書はなく、大出さんの携帯も調べたが、直前の発着信やメールのやりとりもなかった」
鑑識係員は淡々と矛盾点に言及する。
証人「コンロも新しいものに見えたが、購入先のレシートや包装用紙などもなかった。このため、大出さんの自宅に行き、起動していたパソコンも調べたが、自殺サイトへのアクセスはなかった。結婚紹介サイトを利用していたことや被告とのメールのやりとりなどを確認しました。他殺の可能性が高いことを認識し、上司に報告しました」
検察官「車の鍵を探したのはなぜか」
証人「自殺をする人がわざわざ車の鍵を投棄することは考えられず、誰かが持ち去ったことも考えられるからです。だが、鍵は見つからなかった。また、車内に薬や酒を飲んだあとも認められなかった」
検察側は現場の状況などから、大出さんの死に被告が関与している可能性が高いことを裁判員に印象づけていく構えだ。この後、弁護側の証人尋問に移る。木嶋被告は終始、無表情で前を見つめている。
弁護人「車の外にマッチ棒2本が落ちていたのを知っていますか」
証人「署に戻ってから写真をみて知ったが、現場では気づかなかった」
弁護人「大出さんのライターはどこにありましたか」
証人「後部座席の紙袋の中にありました」
続いて、警察がその後、周辺を捜索した場所について、モニターに映し出された地図を示しながら証人に確認する。しかし、鑑識係員の答えはあいまいだ。
弁護側は、周囲の捜索が尽くされていないために車のキーやマッチ箱が見つからなかっただけだと印象付け、自殺だと強調したい構えだ。