初公判(2012.1.10)

 

(5)午後はジャケットに衣替えリップグロスも 傍聴者あ然

木嶋被告

 首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけ男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判の初公判(大熊一之裁判長)は、午後の審理が始まった。

 木嶋被告はブルーのカーディガン姿から一変、白のカットソーに紺のジャケットに衣替え。口元は、薄くリップグロスが塗られている。傍聴者はあまりの変わりぶりに、木嶋被告をのぞきみる。

裁判長「それでは、検察側の第2冒頭陳述ですね」

 午前中の冒頭陳述の詳細を検察官が行うようだ。この言葉に促され、検察官が立ち上がり、証拠の位置付けを表した図がモニターに映し出される。

 殺人や詐欺など10の事件に問われている木嶋被告。公判では、まず平成21年8月に埼玉県富士見市の駐車場で駐車中のレンタカーの車内で練炭を燃やし、薬物で眠らせた交際相手の大出嘉之さん=当時(41)=を一酸化炭素中毒で殺害した事件についての審理が行われる。大出さんの事件は通称、埼玉事件と呼ばれている。

検察官「証人のほか、メール、練炭などの証拠物などを使って埼玉事件について2週間で審理したい。3件の事件は東京、千葉、埼玉の順で発生。本来、審理は埼玉事件が最後となるが、東京事件では当初、自殺、千葉事件もたばこの不始末と警察が判断。埼玉事件だけ、当初から警察が他殺と判断したことから、埼玉事件から立証していく」

 この後、なぜ他殺と断定できたかについて、現場の写真や警察官の証言などから立証する旨の説明が行われた後、第2冒頭陳述に入る。

検察官「被告は平成21年6〜7月ごろ、生活に困窮。大出嘉之さんと7月中旬ごろから交際を開始し、7月24日に学費名目で470万円を入手。7月から8月にかけて結婚の約束をした。だが、その一方で被告は大出さんの以外の男性とも交際。大出さんへのうそがばれるのを恐れ、殺害を準備。6月から7月にかけて睡眠薬と練炭を入手しているほか、犯行2日前の8月3日に睡眠薬を入手した」

 検察側は、被告が学費名目で大出さんから金を入手しながら、結婚する意志がなかったことから、大出さん殺害を計画したことを裁判員に理解してもらおうとしている。

 さらに、検察官は「大出さんは自分で睡眠薬を入手していない」とし、司法解剖の結果、大出さんから検出された睡眠薬は木嶋被告が入手したもので、大出さん殺害は木嶋被告の犯行以外にあり得ないとの証明をしていく方針を示した。

 検察官の詳細な冒頭陳述に続き、弁護側も埼玉事件について詳述する。

弁護人「被告は平成21年6月ごろ、『料理教室を開きたい』と、経済的支援をしてくれる人と結婚したいと思っていた。その後、大出さんと知り合い、一度は結婚を考えたが、大出さんとの関係がうまくいかないことからこれを断念した」

 裁判員に結婚詐欺の意志はなかったことを印象付ける構えだ。

弁護人「その後、事件当日、大出さんに誘われてレンタカーで現場に行き、ここで1万円をもらってタクシーで帰宅した。自宅に残したメモは(偽装工作ではなく)、以前撮った写真を返してもらうためで、このとき、大出さんの死を知らなかった。また、被告は以前から不眠症で睡眠薬を服用しており、大出さんが被告の家に立ち寄った際に被告の家から睡眠薬を入手した可能性もある」

 弁護側はあくまでも大出さんの死は自殺であり睡眠薬は自分で服用したものとの主張を繰り広げる。裁判員の負担を考慮し、ここで大熊裁判長が午後1回目の休憩を告げた。

⇒(6)練炭や着火剤…目の前の殺害道具にうなずく