初公判(2010.11.24)

 

(3)次々出てくる凄惨な現場写真に凶器…不安げな裁判員

高窪教授

 恩師で中央大理工学部の高窪統教授=当時(45)=を刺殺したとして、殺人罪に問われた教え子の家庭用品販売店従業員、山本竜太被告(29)の初公判が、約25分の休廷を挟んで再開された。

 入廷した山本被告は弁護人の横の席につき、弁護人と小声で相談している。続けて6人の裁判員が入廷し一礼。今崎幸彦裁判長が再開を告げた。

裁判長「それでは証拠の取り調べを始めます」

 男性検察官がメモを裁判所事務官に渡し、裁判員らに配布された。検察官は穏やかな口調で説明を始めた。

検察官「それでは検察官が請求した証拠の内容を説明します。証拠の一覧表を配布しております。きょうは検察官が請求した証拠の1番から15番までを取り調べます」

 裁判員らは手元の資料と検察官を交互に見ている。ここで女性検察官に交代し、証拠の説明が始まった。

検察官「1番から順番に説明していきます。犯行現場付近の報告書です」

「現場となったのは東京都文京区春日の中央大学理工学部キャンパスです。最寄り駅は東京メトロの後楽園駅と都営地下鉄の春日駅です。見取り図を示します…」

 法廷内の大型モニターにキャンパス周辺の地図が映し出された。検察官はキャンパスの地図や写真を示しながら説明を続けていく。

検察官「キャンパスには東門、正門など5カ所の門があります。キャンパスには1号棟から6号棟の6棟があり、7号棟が売店、8号棟は高等学校の校舎です。現場となった1号棟はキャンパスのほぼ中央にあります」

 続けて、検察官はキャンパスで東門から1号棟に向かう道のりを説明。モニターにはキャンパスの写真が次々と映し出される。右から3番目の女性裁判員は手元モニターに見入っている。さらに、検察官は1号棟の説明を始めた。

検察官「1階西階段の状況です。地下1階から屋上まで続いています…」

 現場となった1号館4階の見取り図が示された。現場となった男子トイレは建物のほぼ中央にある。

検察官「東西に通路が伸びていて、中央の北側にエレベーターがあります。中央エレベーターの隣が現場となった男子トイレです」

「通路に面して研究室があります。高窪教授の研究室は通路の東寄りです」

 さらに、検察官は現場となった男子トイレの説明を始めた。

検察官「トイレ内の見取り図です。便器が4つあり、和室と洋室の個室があります。床には多量の血痕が付着しています」

 法廷内の大型モニターに現場のトイレの見取り図が映し出された。トイレの中央付近の広い範囲が赤く塗られている。

検察官「出入り口から見た写真です」

 法廷内の大型モニターには入り口から見た男子トイレの写真が映し出された。裁判員に配慮したのか、白黒写真になっている。

検察官「次の写真です。洗面所の写真です。続けて、床の状況の写真です」

 トイレの床面の白黒写真が写し出された。血痕が黒々と広がっており、一部は争ったのかかすれた部分も。床には証拠を示す三角形のコーンがいくつも置かれている。事件の性質を物語る凄惨(せいさん)な現場に、右端の女性裁判員は顔をこわばらせた。山本被告は無表情のまま、宙を見つめている。

 さらに、検察官は中央階段や3階の西階段などを写真や見取り図を示しながら説明した。

検察官「続けて、(凶器となった)刈り込みばさみについて説明します。犯行に使われたものと同種品を入手した経緯です」

「平成21年5月21日、被告は警察官に、ユニティ湘南平塚店で、刈り込みばさみ安来鋼付き210ミリ、4980円のものを、凶器として使用したことを申し出て、警察官が同種のものを購入したものです」

「刈り込みばさみの刃の長さについてです。解体して片刃にし、切っ先を鋭利に加工したものを被告は使用しました。全長78・3センチ、刃渡り27・8センチとなります」

 ここで、女性検察官が凶器となった刈り込みばさみと同種のものを取り出した。

検察官「このあと、分解いたします」

 女性検察官が刈り込みばさみの付け根の部分のねじを回して分解した。裁判員らは興味深そうに検察官を見ている。女性検察官は分解したはさみを両手で掲げて説明を始めた。

検察官「持ち手に金属印がついているものが証拠です」

 ここで今崎裁判長が割って入った。

裁判長「被告に質問しますか」

検察官「後ほど」

裁判長「被告、あれを見て」

 山本被告はちょっとびっくりした様子で、裁判官を見た後、検察官を見つめた。

検察官「この刃物が見えますか」

山本被告「はい」

検察官「これはあなたが今回の事件で使ったものと比べてどうですか」

山本被告「同じものです」

 山本被告はか細い声で答えた。

検察官「質問は以上です」

 右から2番目の男性裁判員はメモをとっている。

検察官「これから先は、中央大理工学部1号棟4階トイレに臨場した警察官が、事件発覚直後にデジタルカメラで撮影したものです。ご遺体の写真もありますので、大型モニターをオフにします」

 法廷内の大型モニターが消された。右端の女性裁判員は不安そうな表情を浮かべた。検察官が現場の説明を始めた。

検察官「被害者は男子トイレ内の床に、頭部を入り口に向けた状況で倒れていました」

「この写真は、救急隊が被害者の着衣を破っているところです。背部には多数の傷がありました」

「次の写真です。被害者の西の床に右足のサンダルが落ちていました。洋室トイレの個室内に、左足のサンダルが落ちていました」

 大型モニターが消されているため、どんな写真が示されているか傍聴席からは見えない。左から3番目の男性裁判員は上体を少し後ろに倒し、手元のモニターを見つめている。

検察官「トイレ内に残された痕跡です。男子トイレの床の血痕を取り除くと7カ所の損傷がありました」

「損傷個所を拡大して示していきます。(ア)から(カ)の黒丸が床にあります」

 ここで裁判長が検察官に損傷個所の数の間違いを指摘した。

裁判長「(ア)から(カ)ですか」

検察官「失礼しました。(ア)から(キ)です」

「損傷個所の床のシートを剥離し、損傷を確認しました。損傷はシートを貫通し、コンクリートに及んでいました。損傷個所の(カ)から、金属片が発見されました」

 コンクリートにまで達する損傷。検察官は山本被告の激しい殺意を示したいようだ。

検察官「次に、高窪教授の衣服を示します。着ていたワイシャツの全体に血痕が付着しています。背中を中心に、多数の切裁痕があります」

「ワイシャツはもともとは白地で、青のストライプのものでした。スラックスにも血痕が付着しています」

「次に、現場にあったサンダルを説明します。左右両足に切裁痕がありました…」

 右から2番目の男性裁判員は真剣な表情で手元のモニターを見つめている。

⇒(4)47カ所の傷を3D映像で再現 残忍な犯行に目をそらす裁判員