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(2)「関心引こうと万引きしてプレゼント」

弁護人「精神科に通っていたということだが、そのなかに『起立性低血圧症』だったと書いてあったが、これはどういうものなのか?」

鈴香被告「朝礼や運動会のあいさつのときに最後まで立っていられず、しゃがみこんだり、中学の卒業式の時は、座っていられずにずり落ちて、保健室に連れて行かれたこともあった」

弁護人「周囲から何か言われたか?」

鈴香被告「担任に言われた」

弁護人「何を?」

鈴香被告「『あなたの面倒だけ見ているわけにはいかないから、修学旅行にこないで』と」

弁護人「それでどうした?」

鈴香被告「母に行きたくないと言ってみたが、『お金払っているんだから』と言われ、無理やり行かされた」

弁護人「修学旅行は楽しかったか?」

鈴香被告「いいえ」

弁護人「友達はいたのか?」

鈴香被告「1人だけいた」

弁護人「もっと他にほしいとは思わなかったのか?」

鈴香被告「思った」

弁護人「それで、どうしたのか?」

鈴香被告「人にものをあげると仲良くなってくれると思い、万引して分け与えた」

弁護人「どんなものを万引したのか?」

鈴香被告「かわいいメモ帳や消しゴムなど」

弁護人「ばれなかったのか?」

鈴香被告「ばれた」

弁護人「反応は?」

鈴香被告「先生や親から責められ、悪い評判が立った」

弁護人「それ以外に影響は?」

鈴香被告「物がなくなると、必ず『鈴香がやった』と言われるようになった」

弁護人「いつごろまで?」

鈴香被告「高校卒業するまで」

弁護人「中学校に入ると、小学校時代のバイ菌扱いはどうなったか?」

鈴香被告「持ち上がりだったから、変わらなかった」

弁護人「ほかに中学ではどんな扱いを?」

鈴香被告「ほとんど無視の状態だった」

弁護人「クラブには入っていたか?」

鈴香被告「ない」

弁護人「友達は?」

鈴香被告「いなかった」

弁護人「話をする友達は?」

鈴香被告「いなかった」

弁護人「中学生活が始まると父親の暴力がエスカレートしたようだが、それは?」

鈴香被告「(父親が)長く家にいるようになったから」

弁護人「それはなぜ?」

鈴香被告「浮気をやめたからだと思う」

弁護人「高校時代のあなたは?」

鈴香被告「悪い言葉で言うと『使いっ走り』のような存在で、リーダー的な人に逆らわないようにして、いじめの対象にならないようにしていた」

弁護人「具体的には?」

鈴香被告「部活前に、二ツ井の町に出て万引したりして。『あれを取ってこい』とか『これを取ってこい』とか言われてやったりしていた」

弁護人「リーダーの手先になっていじめたことは?」

鈴香被告「部室に鍵をかけて入れないようにしたり、トイレに閉じこめたり、いじめの現場を見られないよう見張りをしていたりした」

弁護人「停学処分になったこともあるようだが。これは、部活のお金を先生のところからとったということでいいのか?」

鈴香被告「はい」

弁護人「高校の卒業文集ではひどい言葉が投げかけられているが覚えているか?」

鈴香被告「なんとなく覚えている」

弁護人「なんとなくとは?」

鈴香被告「嫌な言葉が書かれているので、捨てた記憶がある」

弁護人「具体的にどのようなことが書かれていたかは?」

鈴香被告「覚えていない」

弁護人「あまり重くはとらえていなかったということか?」

鈴香被告「見たくなかったので、手放したいと思っていたから」

弁護人「高校時代の父親の暴力は?」

鈴香被告「エスカレートした」

弁護人「どのように?」

鈴香被告「テキ屋の人と話していたら近所の人が見ていて父親に報告した。そしたら、家で(父に)『どこへ行っていたんだ』と言われ、みぞおちに拳でパンチ食らって、玄関で髪を引っ張られ、引きずり回された。一緒にいた友達のところにも行かされ、友達も父から叩かれ、鼻血を出していた」

弁護人「高校卒業後、栃木県の温泉へ就職したが、なぜ、県外にいったのか?」

鈴香被告「父親から離れ、誰も知らないところでやり直したいと思ったから」

弁護人「父親の反応は?」

鈴香被告「最初は県外に行きたいと言っただけで殴られたが、1カ月に1回、近くの親戚のところに顔を出すと約束して納得してもらった」

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