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(5)キレた「殴った時を見てないし!」…検察官「狙って? 狙って?」質問に

数十秒間にわたって沈黙した後、検察官が質問を再開した。歌織被告は小さな声でボソボソと話を続けた。

検察官「前回の被告人質問では、『首から上を狙って殴った』と言ったが、話の内容が違いますよ」

歌織被告「結果的に(寝ていた)マットから出ている(祐輔さん)の(体)は、私が座っている場所から見えるのは、首しかないのです。それは日常的になっていた。目隠ししても分かるくらいです」

検察官「狙って殴ったわけではないが、この辺りに頭があるのは分かって、殴ったということか」

歌織被告「…分からない」

検察官「どうしてですか?」

この質問に対して、歌織被告は突然、声を荒げた。

歌織被告「さっきも話したけど、私は殴った時を見ていないし! 見ていたかもしれないけど、覚えていません! 関係ないことは覚えているけど、彼の頭を見ていたかというと、見ていなかったし、実際に見ていたのは別のもの。頭を見ていなかったのだから、見ていないものを『狙っていたか』と言われると…」

検察官「ワインボトルが重かったとか、体が重くて仕方がなかったという話を、刑事や検察官に話したか?」

歌織被告「警察には話したと思います」

検察官「弁護士には?」

歌織被告「話したと思う」

裁判長「話したのに、前回の被告人質問では話さなかったわけ?」

歌織被告「話さなかった」

検察官「そういう話をしようと、(弁護士との)打ち合わせでは話さなかったのか」

歌織被告「なかった」

検察官「それを不満には思わなかったのか」

歌織被告「はい」

数十秒の沈黙。検察官が資料やメモをめくりながら、質問を再開した。

検察官「この話を、鑑定人にはいつしましたか?」

歌織被告「覚えていません」

検察官「(鑑定人の)金(吉晴)先生のところで(脳波の)検査をしたと思うが、何回したか?」

歌織被告「2回です」

検察官「脳波の検査を基準に考えて、いつ話したか?」

歌織被告「脳波検査の前です」

検察官「2回しているが、両方の前か?」

歌織被告「はい」

検察官「金先生の話だと、1回目の後ということだが」

歌織被告「いつですか?」

検察官「1回目の後だと」

歌織被告「何月何日?」

裁判長「2月20日」

歌織被告「それより前ですね」

検察官「どれくらい前?」

歌織被告「1番はじめに金先生に会ったときは、事件前の彼との生活について中心に話しました。2回目に会ったとき、当日のことを話したので、そのときには、もう話していたと思います」

ここで、話題は殺害時の状況に戻る。

検察官「祐輔さんはマットに、後ろを向いて寝ていたか?」

歌織被告「そう」

検察官「あなたは(被害者が寝ていた)マットの外側にいたのか?」

歌織被告「外にいた」

検察官「どのくらい?」

歌織被告「分からない」

検察官「手で示して」

歌織被告「分からない」

検察官「さきほど、だいたいこの辺にいたと、示したが」

歌織被告「分からない」

検察官「両肘を伸ばして、(ワインボトルを)振り下ろしたか?」

歌織被告「分からない」

検察官「曲げて振り下ろしたか?」

歌織被告「分からない」

検察官「そのとき被害者の頭から血は出ていたか?」

歌織被告「出ていた」

検察官「額か?」

歌織被告「この辺に」

歌織被告が、身ぶりで示す。

検察官「いま髪をかき上げて額を示したので、分かった。どれくらい」

歌織被告「どれくらいといわれても」

検察官「額、全部か?」

歌織被告「全部ではない。一部でした」

検察官「うっすらにじんだという感じか?」

歌織被告「はっきりと血だというのは分かりましたから」

検察官「話は変わるが、さっき裁判長から幻覚、幻視について確認があったが、被害者を殴ったときのことを確認したい。たくさんのフラッシュが光る中で、さまざまな映像が見えたといいましたね?」

歌織被告「はい」

検察官「携帯ストラップのクリーナーが巨大化したものが見えた?」

歌織被告「はい」

⇒(6)「精神鑑定どうでもいい。聞いて欲しかったのは彼との生活」