(12)「非常に有名な方なので救急車呼べない」 知人が元マネジャーとの会話証言

合成麻薬MDMAを飲んで容体が急変した飲食店従業員、田中香織さん=当時(30)=を放置して死亡させたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判第4回公判は、事件当時、押尾被告と電話で話した知人男性が検察側請求の証人として出廷。検察官が引き続き、8月2日の午後6時35分に、押尾被告から証人にかかってきた電話の内容について質問を行っている。
検察官「電話ではあなたと共通の知人の間で、押尾さんと一緒にいた女の子はすでに死亡している前提で話していましたか」
証人「ちょっとはっきり覚えていないですが、そういう状態だと思います」
検察官「そういうとは」
証人「意識のない危険な状態です」
検察官「その後、誰かから電話がかかってきましたか」
証人「はい」
検察官「8月2日、19時48分52秒、押尾さんの携帯からあなたの携帯に1分20秒通話がありましたか」
証人「はい」
検察官「この通話ではどんな内容を話しましたか」
証人「不在着信でぼくがかけ直したと思うんですが」
検察官「どんな内容でしたか」
証人「はっきり覚えていないのですが、女性が亡くなっていると」
検察官「押尾さんの生の言葉でいうと?」
証人「非常に焦った状態で、元マネジャーの△△(法廷では実名)と途中で1回代わっています」
検察官「押尾さんの言い方としてはどんなでしたか」
証人「そこまではっきり覚えていないんですが」
証人は記憶があいまいなようだ。山口裕之裁判長が、検察官に聞き方を工夫するよう促した。
検察官「どういうシチュエーションで女性が亡くなったという話がありましたか」
証人「ちょっと、記憶があいまいで…。すみません」
検察官「何の後に亡くなったとか」
証人「シャワーを浴びたと」
押尾被告と証人は午後6時35分と、午後7時48分の2回、通話をしている。
検察官「(19時の段階で)女性が亡くなったと聞いてどう思いましたか」
証人「非常にまずい状態だと思いました」
検察官「あなたから押尾さんに何か言いましたか」
証人「救急車を呼んだほうがいいと言いました」
検察官「それに対する押尾さんの反応は?」
証人「返事はなかったと思います」
検察官「この後、誰かから電話がかかってきましたか」
証人「元マネジャーの△△君です」
証人は、押尾被告との電話を受けたすぐ後、元マネジャーの△△から電話を受けていた。
検察官「△△さんはどんなことを言っていましたか」
証人「ぼくの方から△△君に聞いて、押尾君は気が動転しているから、(女性が)亡くなっているかいないか聞いた方がいいよ、と言いました」
検察官「△△さんはどこにいたと思いますか」
証人「部屋だと思うんですが」
押尾被告はメモも取らず、背筋を伸ばしたまま、証言を聞いている。検察官は、女性が亡くなっている状況を証人がどう電話で伝えられたかについて詳しく尋ね始めた。
検察官「△△さんはどのように話していたのですか」
証人「『押尾さんは体から反応が出るもの』…とか」
検察官「いろいろ出てきたので整理させてください。まず、女性が亡くなっているのを△△さんが確認したのですか」
証人「見ていないですが、確認したと思います」
検察官「『体から反応が出るもの』というのは△△さんの言葉ですか」
証人「△△さんの言葉です。非常に有名な方なので呼ぶことはできない、と」
検察官「非常に有名な方というのは押尾さんですか」
証人「はい」
検察官「呼ぶことができないというのは」
証人「救急車ですね」
その後、証人は、押尾被告と共通の知人へ電話し、△△との会話の内容を伝えたという。
検察官「押尾さんとは親しい友人関係でしたか」
証人「はい」
検察官「押尾さんに、今の時点で恨みに思っていることはありますか」
証人「特にありません」
仕事などへの支障を考え、衝立による遮蔽(しゃへい)措置を希望した証人だが、支障がなければ堂々と証言したかったという。
別の男性検察官が、質問を続けた。
検察官「今日は話しづらそうな感じがしたのですが」
証人「基本的にあんまり関わりたくないです」
検察官「今も(押尾被告は)昔の友達という感じですか」
証人「はい」
押尾被告は、変わらず背筋を伸ばしたまま、証人を見つめている。
引き続き、弁護側が尋問を始めた。
弁護人「押尾被告と最初に話したときに、詳しい話は聞きましたか」
証人「聞いてません。知人が一緒に車に乗っていたので聞ける状態ではなかったです」
弁護人は、押尾被告が証人に電話した午後6時35分の通話内容について聞いていく。
弁護人「この会話で女の子が薬やって死んじゃったと話したんじゃないですか」
証人「まったくないですね」
弁護人「次に○○さん(法廷では実名)、いや共通の知人との電話内容についてお聞きします。このとき、女性の状態について○○さん、いえ共通の知人について確認しましたか」
証人「ちゃんとやった方がいいと思います。仕事を」
証人は、弁護人が繰り返し、共通の知人の実名を出したことにいらついたようだ。
弁護人「最初の電話で意識がないというのであれば、そのことを共通の知人に聞こうと思わなかったのですか」
証人「女性が誰だか分からないので聞こうと思わなかったです」
弁護人「普通は聞くのではないですか」
証人「誰か分からないんで」
弁護人「最初の電話で女性が亡くなっていたと聞いていたからじゃないですか」
証人「まったく違います」
裁判長「繰り返すようなら制限しますよ」
弁護人は、押尾被告との2度目の電話の内容について尋ね始めた。
弁護人「2度目の電話で女性が死んでいると聞いたのですか」
証人「△△さんか押尾さんから聞いた気がします」
証人は、押尾被告との1度目の電話で『シャワーを浴びて出たら女性が意識を失っていた』と聞いたと証言していた。
証人が2度目の電話でもシャワーについて言及しており、弁護側は詳しい状況を明らかにしようと質問したが、証人は質問の意味がよく分からないようで、山口裁判長が質問を引き取った。