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(2)切望した執行猶予…裁判官の問いに唇をわずかに動かす

裁判官は、阪田被告の自首によって被害者の男性の無実が晴らされたことにも一定の理解を示した。これまで2回の法廷で行われた被告人質問での供述も、裁判官に届いたようだ。

裁判官「被告人は捜査機関に対して事実関係を素直に供述して真相の解明に協力し、公判においても、同様の供述態度で臨み、真摯(しんし)な反省の態度を示している」

初公判は7月23日、論告求刑が行われた第2回公判が同月30日。阪田被告は初公判では涙を見せながら、ときに消え入りそうな声で「ちょうど彼(蒔田被告)に出会ったときは精神状態がひどく、彼が心の支えになっていました」などと話した。証言席に座った阪田被告の母親も、事件後に阪田被告が自分を責めて苦しみ抜き、自殺未遂を起こしていたことも明らかにしていた。「こんなことをした娘に対して親ばかですが、小さいころから学校の成績も悪くなく、行動力もあり、あらゆることに積極的で、人の心を察知できる子でした。人のルールに反することのない子でした。今でもこんな事件を起こしたことが信じられません」。そう証言する母の姿を見て、阪田被告は肩を震わせて泣いていた。

判決理由の読み上げも終盤に入り、裁判官は、阪田被告にとっての「有利な情状」を並べていく。

裁判官「家族の協力を得て、全被害者に対して相当額の賠償金を支払うことですべての事件で示談が成立しており、強盗未遂、虚偽告訴の各被害者には直接会って謝罪している。被害者は被告人の誠意を認めて、寛大な処分を望む旨の嘆願書の作成に応じたこと、母親が監督し更生させることを誓っていること、鬱(うつ)病に罹患(りかん)していてその治療が必要な健康状態にあること(中略)。これらの事情を総合考慮すると、被告人に対しては、今回に限って社会内における更生の機会を与えるのが相当と認められる」

判決の読み上げが終わった。開廷から約15分。じっとうつむいていた阪田被告に、裁判官が静かに語りかけた。

裁判官「以上が判決の内容です。わかりましたか」

裁判官を見た阪田被告はうなずき、唇は「はい」と返事をしたようにわずかに動いた。しかし、その声は聞こえない。裁判官は、執行猶予付き判決について説明を続けた。

裁判官「5年間悪いことをしなければ、刑務所に行かなくていいということです。ただし、この間に悪いことをすれば、今回の刑と合わせて刑務所に行くことになります。わかりますね」

やはりうなずくだけの阪田被告。判決言い渡しの後に裁判官から反省や更生を促したりするために被告へ語りかけられる「説諭」はなく、すぐに閉廷が告げられた。阪田被告は傍聴席に視線を向けることなく、弁護人とともに関係者専用の出入り口に向かい、法廷を後にした。

閉廷後、痴漢でっち上げ事件の被害者の男性が、報道陣の取材に応じた。表情は硬い。

被害者「執行猶予が付いてよかった。刑の重さとしても妥当ではないか。執行猶予の間は謹慎期間だと思って反省してもらい、親元で早く病気を治して社会に復帰してもらいたい。阪田被告とはこれまでに2度直接会った。親と一緒に土下座して『すいません』と謝罪してくれたので、阪田被告については許したい」」

この日の判決の中で裁判官は「全く身に覚えがないのに、電車内における痴漢という極めて不名誉な罪を突然着させられ、被告人と蒔田被告の巧妙な立ち回りから、必死に弁解するも聞き入れられず、そのまま犯人として逮捕された。丸1日近く警察署留置施設に収容され、平穏な社会生活を送っていた被害者に大きな打撃と屈辱を与えた」と男性のことに触れた。「打撃」と「屈辱」を受けたことは消えない事実であり、蒔田被告に対しては厳しい言葉を述べた。

被害者「(蒔田被告を)許す気持ちにはなれない。ただ、悪質な罪を犯した凶悪な彼と、法廷での姿とのギャップがありすぎて、自分の中で消化しきれず複雑な気持ちだ。今後とも蒔田被告の公判は傍聴していくつもりです」

これまでの法廷に出廷した蒔田被告は、頭を丸坊主に刈り、一見したところまじめそのものだ。この日の阪田被告の判決で「主犯」と認定された蒔田被告の被告人質問は9月3日、大阪地裁で行われる。彼の口からどんな言葉が語られるのだろうか。

⇒主犯 第2回公判