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(6)「『極刑望む』は言葉だけでは?」「違います!」

検察官「(米山豪憲君の父親の)米山さんに書いた手紙には、何と書いたか?」

鈴香被告「体を気づかう言葉と、『豪憲君を生きて帰すことができたら、どんなに良かったのに』と書いた覚えがある」

検察官「弁護側が、あなたが書いた手紙を証拠請求しているのは知ってるか?」

鈴香被告「意味がわかりません」

検察官「弁護士の先生から、どういう証拠を出すか、教えてもらっていないの?」

鈴香被告「教えてもらっている」

検察官「その中に米山さん宛の手紙があることは?」

鈴香被告「聞いている」

検察官「その中に、この手紙があるかどうかは?」

鈴香被告「わからない」

検察官「読まれて都合の悪いことを書いたのではないか?」

鈴香被告「手紙の内容は、正直言って人に話すことではないと思う」

検察官「質問と答えがかみ合っていないが、読まれてだめなことは書いていない?」

鈴香被告「そうだと思う」

検察官「弁護士宛てにはどんな手紙を書いた?」

鈴香被告「言うつもりはない」

検察官「弁護士宛ての手紙を書いているうちに、落ち込んでいったんだね?」

鈴香被告「…そうだと思う」

検察官「どんな内容かは言えないの?」

鈴香被告「手紙の内容は、人に話すことではないと思う」

検察官「話が戻るが、鏡を使って自殺を図った後、鏡の代金の弁償について何か言ったか?」

鈴香被告「弁償するお金がないので、弁償は勘弁してくれと言った」

検察官「その後、いや自殺を図る前だ、『そんなことを言っていると極刑になる』と言われた覚えはないか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「前回の公判で、『極刑を望む』と証言し、自殺未遂をした理由を『自責の念から』と言っているが、本気で自殺を図ったとは思えない。本当なのか?」

鈴香被告「本当です」

いらだちを隠し、努めて冷静に答えようとする鈴香被告に、検察側はさらにたたみかける。

検察官「あなた、弁護士から極刑になると言われ、言葉の上だけでそう言っているのではないの?」

鈴香被告「違います」

ここで、裁判長が検察官に向かって質問を確認した。

裁判長「言葉の上だけで言った、というのはどの言葉のこと?」

検察官「おととい『極刑を望む』と言ったことについてです」

鈴香被告は前を見据え、裁判長と検察側のやりとりを黙って聞いている。続いて検察側は、彩香ちゃんのことについて質問を続けた。

検察官「あなたと彩香ちゃんのことについて聞きます。あなたから見て、彩香ちゃんは良い子だった?」

鈴香被告「はい」

検察官「どんなことをして遊ぶのが好きだった?」

鈴香被告「一人遊びやままごと、年下の子と遊ぶのが好きだった」

検察官「石を集めて遊ぶのも好きだった?」

鈴香被告「はい」

検察官「どんな石?」

鈴香被告「どんなと言われても…。私には普通の石にしか見えない石を集めていた」

検察官「河原の石もあった?」

鈴香被告「河原にはほとんど行かなかったので、わからない」

検察官「私は河原にあるような石、と言ったのだが?」

鈴香被告「はい」

検察官「特にキラキラした石を集めている訳ではない?」

鈴香被告「はい」

検察官「コレクションは今どこにあるの?」

鈴香被告「実家にあるのと、警察にある」

検察官「彩香ちゃんは家で勉強をするのはあまり好きではなかったようだが」

鈴香被告「はい。宿題をしてから出かけるようにしつけていた」

検察官「友達はいた?」

鈴香被告「仲の良い友達はいると思う」

検察官「どんな子?」

鈴香被告「こういう場で子供たちの名前をあげるのは私は好きではないので、黙秘する」

検察官「何人くらいいた?」

鈴香被告「少なくとも2人はいた」

検察官「名前をあげたくないわけ?」

鈴香被告「はい」

検察官「(傍聴している)マスコミは、裁判で名前が出ても言ったりしないが」

鈴香被告「でも、話を聞きに行ったりするのでイヤだ。なぜそのことにこだわっているのかわからない」

検察官「仲の良い子の名前知ってるの?」

鈴香被告「はい」

検察官「豪憲君や弟と仲良かった?」

鈴香被告「普通だった」

検察官「彩香ちゃんはマンガは好きだった?」

鈴香被告「好きだった」

検察官「特に好きなのは?」

鈴香被告「アニメですか?」

検察官「アニメでもいいけれど。テレビのアニメも見ていたのか?」

鈴香被告「やっぱり『コナン』とか、『犬夜叉』とか、『ワンピース』とか、そういうのが好きだった」

検察官「『クレヨンしんちゃん』や『ちびまる子ちゃん』は?」

鈴香被告「できれば見せたくなかったが、会話についていけなくなるので見せた」

検察官「『サザエさん』は?」

鈴香被告「見てました」

検察官「テレビ好きだったんだね?」

鈴香被告「テレビはほとんど彩香が見ていた」

検察側は、彩香ちゃんとの生活についての追及をさらに続けた。

⇒(7)「彩香は邪魔」刑事に言わされた