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(5)熱くなる法廷、「鏡」にがぜん興味示す裁判長

検察官「3月16日に刑務所で自殺を図った。鏡の破片で左腕を傷つけたと言いましたね?」

鈴香被告「はい」

検察官「本当に死ぬ気だったなら、深い傷になるはずだよね」

鈴香被告「深い傷をつけようとしても、浅くしかならなかった」

検察官「発見時に血が止まっていたね?」

鈴香被告「…はい」

検察官「全部、浅い出血だった?」

鈴香被告「あとで医者にも言われたが、鏡では深い傷がつけられない」

ここで裁判長ががぜん興味を示し、検察側をさえぎって直接、鈴香被告に質問を投げかけた。

裁判長「(鏡の)大きさは?」

鈴香被告「(手で大きさを示しながら)手で握れるこのぐらいの…」

裁判長「ちょっと測って」

裁判所の職員がメジャーを持って登場。鈴香被告の手を測り、長さ13センチ、高さ5センチと報告した。

裁判長「四角ですか?」

鈴香被告「三角です」

検察官「刑務所から理由を聞かれるよね?」

鈴香被告「はい」

検察官「何て答えた?」

鈴香被告「鏡の自分が、自分でないような気がしたと」

検察官「死ぬ気については?」

鈴香被告「死ぬ気でなかったと答えた」

検察官「ウソをついたわけ?」

鈴香被告「はい」

検察官「死ぬ気なら、どうしてやったか答えなくてはいけないよね。それから何と言った?」

鈴香被告「…」

検察官「弁護士のことを何か言っていなかった?」

鈴香被告「ちょっと覚えていない」

検察官「裁判のことが心配だが、弁護士が来なくてイライラしたと言っていなかったか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「私も弁護士に連絡したが、覚えていないか?」

鈴香被告「はい」

検察官「裁判のことがどうして心配か、話した覚えは?」

鈴香被告「(約15秒間沈黙の後)ちょっと覚えていない」

検察官「このころ公判前整理手続が始まったばかりだった。弁護士から連絡を受けていた?」

鈴香被告「はい」

検察官「1回目が2月に終わったころから、不安になっていると話さなかったか?」

鈴香被告「いつも不安で、気持ちも不安定なので、いつ不安があったかと言われても…」

検察官「そのころ、どんな不安を持っていた?」

鈴香被告「ちょっと覚えていない」

この後、鈴香被告の沈黙が目立つようになる。

検察官「ウソの裁判が進行するのが心配になったと言っていないか?」

鈴香被告「黙秘します」

検察官「『覚えていない』のではなく、黙秘ですか?」

鈴香被告「…」

裁判長「答えなしで続けて下さい」

検察官「殺人事件とあなたが言っているのは(米山)豪憲君のことだと思うけれど、殺人事件の本当の場面が夢に出てくると言ったことはないか?」

鈴香被告「…(約30秒沈黙)」

検察官「答えなしだね。自殺を図ったころは弁護士は大まかな方針で、豪憲君事件の罪状は争わず、彩香ちゃんへの殺意はなかったとした。こういう主張が気に入らなかったことはないか?」

鈴香被告「ない」

検察官「豪憲君の事件には『別の犯人がいる』と言ったのではないのか?」

鈴香被告「…(約20秒沈黙)」

検察官「黙秘するなら、黙秘する、と言ってほしい」

鈴香被告「黙秘します」

検察官「その後、8月25日には刑務所でタオルを使って首を絞めている?」

鈴香被告「はい」

検察官「本気で死のうとした?」

鈴香被告「はい」

検察官「力を込めたか?」

鈴香被告「はい」

検察官「本当か?」

鈴香被告「はい」

検察官「刑務所の職員が駆けつけたとき、すぐカギを開けたか?」

鈴香被告「はい」

検察官「外で『手を離しなさい』と言われなかった?」

鈴香被告「混乱していてよく覚えていないが、言われていないと思う」

検察官「首絞めてから来るまでは?」

鈴香被告「すぐ」

検察官「すぐってどれぐらい?」

鈴香被告「1分もかからなかったと思う」

検察官「本気で絞めた?」

鈴香被告「はい」

検察官「1分も絞められるのか?」

鈴香被告「1分じゃなくて、1分もなかったと言っている」

検察官「担当職員は本気でやっていないのが分かったので、外から指示したことはないか?」

鈴香被告「ないと思う」

検察官「どうしてこういうことをしたか、当然聞かれた?」

鈴香被告「はい」

検察官「何と答えた? 最近だからこれは覚えているのでは?」

鈴香被告「もう2度と自分の子供を抱けないと思って、子供を産めない、産む機会がないと。そういうことを言った覚えがある」

検察官「その日手紙を書いた?」

鈴香被告「はい」

検察官「そのせいでより落ち込んだ?」

鈴香被告「あったかも知れない」

検察官「だれに書いた?」

鈴香被告「米山さんと弁護士の2人」

検察官「どちらもその日のうちに書いた?」

鈴香被告「ちょっと覚えていない」

⇒(6)「『極刑望む』は言葉だけでは?」「違います!」