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(3)「目が半開きで口が大きく開いていました」…事件の恐怖語った目撃者

証人として出廷した目撃者は、加藤智大(ともひろ)被告(27)がトラックで秋葉原の交差点に突っ込んだ際のことについて証言を続ける。トラックから降りて男性を背後から襲い、その後も、別の人を襲おうとする男の様子を詳しく語る目撃者。弁護人席前の長いすに座った加藤被告とは衝立で仕切られており、加藤被告は下を向いたまま、やりとりを聞き入っている。

検察官「トラックから降りてきた男が向かった先には、どんな人がいましたか」

証人「白いワンピースのの女の人がいました」

検察官「女の人はどちらを向いていましたか」

証人「東側を向いていました」

証人は、白いワンピース姿の女性がいた場所を、現場地図に、Bと記した。その様子が、法廷の大型モニターに映し出される。女性がいた位置は、トラックの背後にいた男性から、さらに西側の場所だ。

検察官「男はこの後、何をしましたか」

証人「女の人に近づいていって右手をおなかのあたりに押し当てるように見えました」

検察官「右手は見えましたか」

証人「見えませんでした。ただ、右肩が女の人にかぶるように動いたのが見えました」

検察官「女の人はその後どうなりましたか」

証人「『痛い、痛い』と言っていました」

検察官「トラックから降りてきた男はどうしましたか」

証人「西側に向かって、今までよりも少し速く小走りをしていました」

検察官「トラックから降りた男が小走りで移動した先に、誰がいましたか」

証人「男の人がいました」

検察官「どんな服装でしたか」

証人「上がチェックのシャツで、リュックを持っていました」

証人は、リュックを持った男性被害者がいた場所を、現場付近の地図にCと記した。地図に書き入れられた印から、現場を目撃した証人のすぐ目の前に、トラックから降りた男が迫ってきていたことが分かる。

検察官「リュックを持った男性はどんな行動をとりましたか」

証人「初めは東を向いていましたが、男が目の前にきたときに、右回りに西側を向きました」

リュックを持った被害者男性は、逃げようとしてトラックから降りてきた男に背を向けたようだ。

検察官「トラックから降りてきた男は何かしましたか」

証人「手に持っていた黒いものを、リュックを持った男性の背中に押し当てました」

検察官「背中のどのあたりでしたか」

証人「左側だったと思います」

検察官「リュックを持った男性はどうなりましたか」

証人「北側に向かってゆっくりと歩いて、車道と歩道の段差を枕代わりにしてあおむけに倒れてしまいました」

当時の惨状を思いだしながら語る目撃者の声は、時折消え入りそうに小さくなる。加藤被告は、左手で鼻を軽くかいた。

検察官「その後、トラックから降りてきた男はどうしましたか」

証人「西に向かってかなり速いスピードで走っていきました」

検察官「走っているときに声を出していましたか」

証人「奇声のようなものです。何を言っているかは聞き取れなかったです」

検察官「あなたはどうしましたか」

証人「マクドナルドの中に入りました」

マクドナルドは現場近くの大型家電量販店「ソフマップ」の中にあるハンバーガーショップ。証人は、3人が刺される様子を、ソフマップの南側で目の当たりにしてきた。トラックから降りてきた男が徐々に迫ってきたため、店の中に逃げ込んだようだ。

検察官「マクドナルドにはどれくらいいましたか」

証人「5分から10分くらいです」

検察官「マクドナルドから出たときに、(刺された)3人の人はその場にいましたか」

証人「いました」

検察官「最初の男性はどういう様子でしたか」

証人「歩道に座り込んでいました。女の人がそばにいました」

検察官「女の人は(最初の)男性に何をしていましたか」

証人「背中にハンカチを当てていました」

検察官「最初の男性はけがをしていましたか」

証人「ハンカチのはじから、赤いものがにじみ出ていました」

検察官「白いワンピースの女性はどうでしたか」

証人「東の方に頭を向けてあおむけになっていました」

検察官「女性はけがをしていましたか」

証人「はい」

検察官「リュックを持った男性はどうでしたか」

証人「目が半開きで口が大きく開いていました。あおむけで寝転がっていました」

検察官「リュックを持った男性のところに、ほかの人はいましたか」

証人「男の人がいました。リュックを持った男性を軽く揺さぶって声をかけていました」

検察官「リュックを持った男性は反応していましたか」

証人「反応していませんでした」

次々に語られる事件の惨状。検察側はここで、目撃状況についての質問を終え、証人の心情について問いかけを始めた。

検察官「事件のことを誰かに話しましたか」

証人「学校の、よく秋葉原に来る友達にしました。『2、3週間くらい来ない(行かない)方がいいよ』といいました」

検察官「なぜそう話しましたか」

証人「もしかしたら、近いうちにまたあるかもしれないと思って、友達が刺されたり目撃者になるのはかわいそうと思いました」

加藤被告は微動だにしない。目撃者は、さらに話を続けていく。

⇒(4)通行人を次々に襲った男は“狙い”を定めた…弁護人が詳細に質問