第34回公判(2012.3.12) 【論告求刑】

 

(2)着火剤の数に睡眠薬の種類…木嶋被告以外の犯人「考え難い」

木嶋被告

 首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけ男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判(大熊一之裁判長)は、検察側の論告が続けられている。

 検察官は、公判同様に3つの殺人事件を中心に論告を進め、まず、東京都千代田区の大出嘉之さん=当時(41)=殺害事件について言及する。

 木嶋被告は、起訴状などによると、平成21年8月に、埼玉県富士見市の駐車場で駐車中のレンタカーの車内で練炭を燃やし、薬物で眠らせた交際相手の大出さんを一酸化炭素中毒で殺害したとされる。

検察官「この事件の最も大きな争点は大出さんは自殺したのか、殺害されたのかです」

「そして、大出さんが殺害されたとすれば、犯人はだれかということです」

 検察官は、裁判員にも分かりやすく論点整理から入る。その上で、現場の状況の説明に入る。

 大出さんの遺体はレンタカーの後部座席で見つかった。さらに助手席には燃焼した練炭があった。

検察官「一見すると自殺したかに思います。けれども、明らかに不自然な点が2点ありました」

「大出さんのご遺体が見つかった現場には、レンタカーのカギがありませんでした」

「もし自殺したのであれば、現場にないはずがありません」

 検察官は、さらに現場の不自然さを際だたせる。

 練炭はマッチで着火された形跡があった。助手席にはマッチ棒が多数の転がっていたためだ。

検察官「マッチ棒があったにもかかわらず、マッチ箱がありませんでした」

「本当に自殺したのであれば、なければおかしい」

「この2点の事実だけでも自殺したのではないという客観的な証拠です」

 検察官は、その他の細かな点からも論じる。

検察官「(大出さんの手には練炭を扱った際に付着する)炭の痕がありませんでした。遺書もありませんでした」

「結論として、何者かに殺害されたことは間違いありません」

 丁寧な検察官の論告は続く。

検察官「では、続いて犯人が被告人だという3つの点から論じます」

「事件の8月5日当日から遺体発見の翌6日まで被告人以外の第3者との接触はありませんでした」

「次に、殺害に使用された練炭とコンロは、被告人が購入。8月5日にも着火剤24個を購入しています。現場の練炭、コンロ、着火剤24個は、数もメーカーもすべて被告人が購入したものと一致します」

「睡眠剤も被告人が準備したものです。ハルシオンに、レンドルミン…。この種が、大出さんの遺体から検出されました」

 検察官は、一気にまくしたてた後、結論を述べた。

検察官「被告人以外が殺害したと考え難い」

⇒(3)同じ日に知り合った複数の男性に「運命の人」と同じ文面のメール