第4回公判(2010.9.9)

 

(4)「病院は3次救急なら受け入れ拒めず早い」はっきり答える救急隊員

押尾被告

 保護責任者遺棄致死などの罪に問われている元俳優の押尾学被告(32)の第4回公判。合成麻薬MDMAを押尾被告と一緒に飲んで死亡した飲食店従業員、田中香織さん(30)を病院まで搬送した場合の状況について、救急車の走行実験を行った麻布消防署の救急隊員に対する弁護人の反対尋問が続く。

弁護人「3次救急の際、病院受け入れの決定までに時間がかかることはありますか」

証人「それは少ないと思います」

弁護人「3次救急では、消防の指令室に電話を入れ、指令室で受け入れ病院を探すのですか」

証人「そうです。現場から距離の近い病院順に電話をかけ、聞いていきます」

弁護人「徐々に遠いところへ電話をかけていくのですね」

証人「そうですね」

 左から3番目の男性裁判員が熱心にメモを取っているようだ。

 弁護人の尋問が終わり、山口裕之裁判長が検察側に対し、ほかに質問することがないか尋ねる。男性検察官が立ち上がった。

検察官「1点だけお聞かせください。先ほど異議を出したことでもありますが。心肺蘇生(そせい)術とAED(自動体外式除細動器)について、どういう順で行うのか説明してください」

証人「それは状況によります。救急隊が心肺停止の状態を確認してから決めます」

検察官「心肺蘇生とAEDはそれぞれ別個で対処するのですか。AEDはどのようなものを使用しますか」

証人「心電図を評価することができるAEDを使います」

 証人の救急隊員は一貫してはっきりとした口調で質問に答え続けている。

検察官「ビルなどに置いてあるようなものではなく、心電波形が出る高度なものが使えるのですね?」

証人「その通りです」

検察官「結構です」

 弁護側、検察側双方の尋問が終了し、山口裁判長が裁判員らに対し質問があれば行うよう促している。

 裁判員からは特にないようだ。向かって右側の男性裁判官が証人に視線を合わせ、質問を始めた。

裁判官「2次救急と3次救急の違いについて説明がありました。傷病患者への接触から搬送までにおいて、2次と3次で異なる点は病院の選定ですか」

証人「選定だけではありませんが、選定について言えば3次救急よりも2次救急の方が時間はかかります」

裁判官「さっきの説明ですと…」

 山口裁判長が男性裁判官に視線を送ったあと短い会話を交わし、質問者が山口裁判長に代わった。

裁判長「2次救急と3次救急。患者の場所まで行って搬送までどう違うのかということです。病院の選定以外に時間がかかることはありますか」

証人「3次救急ならば現場で病院の選定を実施せず、指令室で行います。病院は3次救急の受け入れを拒むことはできません。このため早くできるということはあります」

 質問者が向かって左側の男性裁判官へと代わった。

 押尾被告はじっと前方の証人に顔を向けている。

裁判官「先ほど検察官から被害者の状態を示した表がありました。意識は不穏状態で緑の枠にありましたが、これで3次救急でないと判断することはできますか」

証人「単一で判断することはありません」

裁判官「青いところが2カ所あれば3次救急になるところだったとありましたが、青1カ所で3次救急になることはありませんか」

証人「ないです」

裁判官「ほかの諸々の状況を観察しなければ判断はできないということですか」

証人「そうです」

裁判官「薬物を使用していたというような話が搬送時に出てくれば即座に赤となり、3次救急になるのですか」

証人「その通りです」

 再び山口裁判長が質問を始めた。

裁判長「心肺停止とはどういった状況を指すのですか」

証人「呼吸がなく脈が触れない状態です」

裁判長「心臓は動いてもポンプとして(血液を)押し出す力が弱くなれば、脈が触れないということもあるのですか」

証人「そうです」

裁判長「現場で心電図を測ることは可能ですか」

証人「携帯式の心電図がありますので計測が可能です。大判型のパットを取り付けます。また、AEDにはコンピューターが搭載されています。AEDの判断と救命士の判断が可能です」

 山口裁判長と男性裁判官が短い会話のやり取りを行う。ひじを付いて考え込むようなしぐさを見せる左から3人目の男性裁判員。

 突然、女性検察官が立ち上がった。山口裁判長に追加尋問を求めている。最後に何か聞きたいことがあるようだ。

⇒(5)「出動まで1分」「六本木ヒルズまで2、3分で到着可能」 救急隊員が証言