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(5)「みんな死んでしまえ」「目標は100人」… 読み上げられる掲示板の書き込み

検察官による証拠書類の読み上げが続く。加藤智大(ともひろ)被告(27)の表情は変わらない。背筋を張り、視線を検察官の方へ送っている。

検察官「続いて読み上げるのは141号証です。内容は捜査報告書で、千代田区外神田の○○(パソコン販売店の実名)の防犯カメラの画像です。これは、松井満さんの被害前の状況です」

被害者の松井満さん=当時(33)=が殺害される前に、どういう経路を歩いていたかを詳細に示す店舗周辺の地図が、法廷の大型モニターに映し出される。加藤被告は表情を変えず、視線をモニターに移した。

検察官「赤色の印が防犯カメラの設置場所です。松井さんが○○の入り口から入ってきて、商品を見ている様子です。矢印が松井さんで、店内に入ってくる様子を5枚映します」

商品を見ながら、店舗内を通り過ぎる松井さんの様子が映し出される。検察官はモニターに表示された5枚の写真を1枚ずつ拡大しながら、説明を続ける。

検察官「続いて、○○の連絡口から(店舗の別棟に)移っていく松井さんの様子の画像6枚です。以上の画像から想定される松井さんの行動は次のようなものです」

モニターの地図には、松井さんが加藤被告と遭遇し、刺されるまでの経路が示された。

検察官「続いて、甲137号証、内容は『電話聴取照会結果報告書』です。これは、通信大手に携帯電話のログを照会したものです。照会から、この携帯電話は090−○○○○−○○○○(法廷では番号が読み上げられる)という回答が来ております。これは加藤被告の携帯電話の番号になります」

検察官は、犯行を予言するような掲示板への書き込みが加藤被告の携帯電話から行われたということを確認しているようだ。携帯電話の掲示板サイトへの書き込みの内容が明らかにされていく。

検察官「次に、被告人の書き込み内容を解析し、時系列にまとめたものをお示しします。以下、それぞれについて読み上げたいと思います」

「5月28日の書き込みです。『社会からはみだしたのか…。ニートでもDQNでもイケメンなら彼女ができますから大丈夫です。不細工な私には絶対にできません』」

DQNとは「ドキュン」と読むネット上の俗語で、「非常識」「頭が悪い」などの意味だ。この後、検察官は5月から6月にかけて、加藤被告が行った掲示板の書き込みの内容を、順々に読み上げていく。

検察官「300人規模のリストラだそうです。やっぱり私はいらない人です」

「ブサイクには人権がないということです」

「何か壊れました。私を殺したのはあなたです」

最初のうちは、掲示板で不満を吐露していた加藤被告。だが、後ろ向きな内容が続く書き込みの閲覧者は減っていったという。

検察官「『みんな死んでしまえ』『誰もいなくなった。狙い通りなんでしょ』…」

「これは6月2日3時1分の書き込みです。『迷惑がかからない方法で?ふざけんな やるなら、できるだけ他人を巻き込んでやる』」

「『目標は100人ぐらい。もっとやりたいけど、体力的にも無理』…。これは6月2日3時6分に書き込んでいることが分かります」

加藤被告は、手元のメモに視線を落としながら、真剣な表情でしきりにペンで何かを書き込んでいる。引き続き、検察官は書き込みの内容を読み上げていった。

⇒(6)殺害準備の過程を詳細に書き込み…「準備完了だ」