第3回公判(2008.5.8)

 

(12)恫喝した? にらんだ? 書面持たしたワケは? 法廷は佳境に

羽賀被告

 弁護人は、事件を暴力団関係者Bの単独犯と主張。恐喝未遂現場とされる大阪市内のホテルでの状況を振り返り、無罪を訴えた。

渡辺被告弁護人「恐喝未遂の事実はすべてが暴力団関係者Bの単独行為。責任をかぶりたくなくて羽賀、渡辺両被告に罪を着せている」

 渡辺被告は空中をにらみ、真剣な顔で弁護人の一言一句に耳をすませた。

渡辺被告弁護人「渡辺被告が男性とホテルで会ったのは、一度顔を見てみたいと思ったから。最初から場所が京都なら行かないと言っていたくらいなので、そもそも恫喝(どうかつ)するような考えはなかった」

 弁護人はホテルのラウンジでの着席状況など当日の状況を詳しく説明。羽賀被告は感極まったのか、うつむいて唇をかみしめ涙をこらえる表情をみせた。

渡辺被告弁護人「この席の主題は、羽賀被告が男性に1000万円を払うことで和解を成立させることだった。男性側からすればメリットの少ない話で、羽賀被告や渡辺被告が恐喝する理由はないし、そんな事実はない」

 渡辺被告は空中を見つめながら弁護士の言葉に聞き入り、強くうなずいた。

 弁護人はホテルでの実行行為について説明を続けた。渡辺被告は、検察官の頭上付近に目線を据えていた。

渡辺被告弁護人「渡辺被告は恫喝するつもりはなく、男性の顔を見てみたい一心で行っただけ。男性は『山に連れて行かれて埋められると思いました』と話しているが、まったく恐れていなかった。顧問弁護士が男性に(債権放棄の)確認書の書面を渡したときに、『内容が違う』とつぶやいたが、座席の半分ぐらいは客で埋まっていた。喫茶店特有の音がする中で果たして聞こえたのか。渡辺被告がわざわざテーブルに近づき、にらむということは考えられない。歩き回っているのを誤解された可能性が高い」

 渡辺被告はやや反り返るような姿勢で、弁論内容に時折うなずいたり、首をかしげながら耳を傾けた。羽賀被告は両手でほほを持ち上げるしぐさも見せたがやはりほとんど動かない。

渡辺被告弁護人「仮に渡辺被告がにらんだとしても、男性が席を立つ数分前からだと、わずかな時間。暴力団関係者Bは『契約が破棄されると思ったからね』と話したように、男性はにらまれたと言いながら自分の意思で署名しなかった。普通なら激怒して立ち去るはず。客観的に威圧行為がなかったのにもかかわらず、自分で席を立たないというのは不自然な行為だ」

 検察官は口元に手を当て、首をひねりながら弁論要旨のページを繰った。

渡辺被告弁護人「男性は書面をロウソクにかざして一部を燃やした。書面に署名せよと脅されたというのなら、無断で焼いたらどのような報復行為があるのか分かるはず。書面が燃えたとしてもたいしたことないと思っていた。怖がっていなかったと考えるのが合理的なので、渡辺被告が恐喝によって署名、押印させた事実そのものがない」

⇒(13)最後に羽賀被告が放った一言は…