Free Space

(1)主文に法廷騒然「無期だ、無期!」

わが子と顔見知りの子を相次いで殺害したとして、世間を震撼(しんかん)させた母親は、どのような審判を受けるのか−。秋田連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職、畠山鈴香被告(35)の判決公判が19日午前10時から、秋田地裁(藤井俊郎裁判長)で開かれた。

すでに雪の消えた秋田市。この日も春の日差しが秋田地裁に降り注いでいる。

開廷前には、2978人が傍聴券を求めて並んだ。地裁の前庭には、テレビ各局がテントを張り、判決速報の準備を整えて、テレビカメラの砲列が地裁の建物に向けられている。

藤井裁判長を先頭に3人の裁判官が入廷。法廷内撮影が終わると、いつものように、米山豪憲君の両親が豪憲君の遺影を手に傍聴席についた。母親の真智子さんは、遺影を包んでいた風呂敷を丁寧にたたみ、ひざの上にのせると、裏返しにした遺影を胸に抱き、目をつぶった。

豪憲君の両親が入廷して間もなく、鈴香被告の母と弟も傍聴席へ。うつむき加減に席へ着く。

程なくして鈴香被告が入廷してきた。白地に細い黒の線が入ったシャツの上には、黒のジャケット、黒のパンツ。足下は、いつものようにピンクのサンダルを履いている。落ち着いた様子で、裁判席に向かって右側の、弁護士の前の長いすに腰を下ろした。鈴香被告を見つめる豪憲君の父、勝弘さん。真智子さんは、まだ目をつぶっている。

そして、藤井裁判長が、開廷を告げた。鈴香被告は、法廷中央の被告人席の前に立った。

裁判長「被告人は前に。それでは開廷します。名前を言ってください」

鈴香被告「畠山鈴香です」

はっきりと自分の名前を告げる鈴香被告。

裁判長「判決を言い渡します。主文−」

主文の読み上げが後回しになれば死刑判決の可能性が高かったが、ここまでいうと、藤井裁判長は一息入れ、そのまま続けた。

裁判長「被告人を無期懲役とする」

身じろぎもせず判決を聞き入った鈴香被告。判決の内容が法廷に響いた瞬間、傍聴席に座っていた報道陣が一斉に立ち上がり、出口へ向かった。廊下で「無期だ、無期!」という声が響いた。一瞬騒然とする法廷内。

父、勝弘さんと母、真智子さんは、体を硬直させている。

⇒(2)顔覆う豪憲くんの母 裁判長、殺意は認めるが…