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(17)いい加減な約束「月命日は手紙書く」

検察側は、畠山鈴香被告のノートの“暴言”に引き続き、鈴香被告がしていた“いいかげんな約束”について言及を始めた。事件に対する反省の色が見えないことを強調しようとしているようだ。

検察官「それから、あなたが豪憲君のご家族に書いた手紙。(昨年)11月17日に書いた手紙には『月命日に手紙を書く』と書いているのに、実際には書いていないのはなぜ?」

鈴香被告「…」

検察官「その後の月命日に、事件についてあなたが思うことを書いているのは、少なくとも弁護側が提出してきた手紙にはない。般若心経は書いてあるけどね」

鈴香被告「般若心経も罪滅ぼしだと考えていた」

検察官「そうじゃなくて、11月17日に宣言しているのは『月命日に、その時々の思いを書いていこう』ということだ」

鈴香被告「般若心経もその時々の思いだ」

検察官「では、8月17日に書いたのは何なのだ?」

鈴香被告「違います」

検察官「何を書いたか言いたくない? 手紙は人に言うもんじゃないから?」

鈴香被告「…」

裁判官「答えなしということで、次行ってください」

明らかにされなかった8月17日の手紙の内容。少なくとも反省からほど遠いことが書かれていたことが想像される。内容を把握している藤井俊郎裁判長は、あきれたような口調で次の質問を促した。

検察官「あなたは(精神鑑定を行った)西脇(巽)先生に最初会ったとき、無理心中ではないかと言われた?」

鈴香被告「最初かどうかは分からないが、言われた」

検察官「で、それはとんでもないと。そのことは誰かに話したか?」

鈴香被告「…」

検察官「例えば、弁護士の先生に話していない?」

鈴香被告「していない」

検察官「えっ、話してないの?」

鈴香被告「はい」

検察官「9月22日に、『(弁護士に)ドクターのことを話して、先生もそういう可能性があると言うので、少し安心した』とある。言っていない訳がない。弁護士に相談しているじゃない?」

鈴香被告「話したかもしれない」

検察官「『そういう可能性もあると言われて少し安心した』と。なぜ安心した?」

鈴香被告「…」

検察官「あなたは(彩香ちゃんを)殺していないっていうんでしょ。で、無理心中とソフトに言われて安心しただけじゃないの?」

ここで裁判官が「まあ、ドクターに言われた話だし、無理心中とは書いてない」と助け船を出すが、検察側はそのまま続けた。

検察官「前日の日記には、『自分が何をしたのか分からない、向き合うのが怖い。それはだれかに違うと言ってほしい』と書いてある。流れで読むとそういう風にしか読めないけど?」

鈴香被告「そう(無理心中)だと言われた訳じゃなくて、可能性と言われたので、安心したのだと思う」

検察官「あと、その日記の中で、元カレのことについて書いてあるところがある。彩香ちゃんが家にいると元カレがどうしたとか書いてあるけど、覚えている?」

鈴香被告「なんとなく覚えているけど」

検察官「被告人質問のとき、彩香と元カレは仲が良くて、家にきたときは遊んでくれていたという話をしましたよね?」

鈴香被告「はい」

検察官「でも、このノートでは『元カレは居間に彩香が来ると、避けるように私のベッドに潜り込んできて寝たふりをしていたのに』とある」

鈴香被告「はい。検事さんが質問をしたときは、そう答えたが」

検察官「え、私が何を言ったと?」

ここで、裁判官、検察側、弁護側3者で、鈴香被告の主張をめぐり、被告人質問で何と答えていたか協議に入った。弁護側は「検察側質問で、元カレが避けていたという話をしたけど、弁護側の再質問で、言い過ぎたという趣旨の発言をした」と主張。検察側は「じゃあ、やっぱり、鈴香被告の主張は元カレと仲が良かったんじゃないか」と反発。裁判官は「まあ、ノートについてはこれぐらいでいいじゃないか」ととりなし、次の質問へ進んだ。

検察官「(鑑定医の西脇医師に)彩香ちゃんが亡くなったあと、体調が良くなったと言っているのか?」

鈴香被告「ここ最近、体調がいいということだ」

検察官「ここ最近、体調がいい?」

鈴香被告「体調が良くなっているというか、落ち着いているという意味だ」

検察官「彩香ちゃんが亡くなったら体調が良くなったと西脇医師に言われたのか?」

鈴香被告「いや、そうじゃなく、自分でそう思っただけ」

検察官「以上で結構です」

検察側の質問が終わり、検事が席に着くと、藤井俊郎裁判長が、「では裁判官から質問します」と口を開いた。

⇒(18)「子供がいなかったらということが…」