(3)「アイデアは女が出した」共犯者に罪なすりつけ
検察官「乙1〜9号証は被告人の供述調書です。1号証は被告人の身上経歴など…4号証は被告人と共犯者の関係についてで、犯行動機について被告人は『収入が減り、遊興費にまでお金が回らなくなった』と供述している。5号証では『痴漢でっち上げのアイデアを出してきたのが自分か共犯者かはっきりしないが、自分としては共犯者が出してきたと思っている』と供述しています」
検察官による証拠調べが終わり、10秒間ほどの沈黙の後、裁判官が話し始めた。蒔田被告はおどおどした様子で聞いていた。
裁判官「(証拠の)認否は留保するということでいいでしょうか」
弁護人「書類が一昨日来たばかりなので」
裁判官「追起訴の予定はありますか」
検察官「6月上旬に追起訴がある予定です」
裁判官「まだ続くのですか」
検察官「続く可能性もあります」
裁判官「追起訴などを待って審理を進めるということでいいでしょうか」
蒔田被告は両手をひざの上に乗せたまま黙ってやりとりを聞いていた。次回公判の日程が追起訴後の7月3日に決定した。
裁判官「被告人は立ってください。では次回は7月3日の午後1時半から2時半までに決まりました。被告人よろしいですね」
蒔田被告「…はい、はい」
相変わらず小さい声でしか話さない蒔田被告。どことなく落ち着きのない様子だ。
裁判官「では、閉廷します」
10時24分閉廷。裁判官の呼びかけに、蒔田被告はまた小さな声で返事をし、ゆっくりと3度、頭を下げた。閉廷後は傍聴席をちらっと見た後、弁護士と目が会うと会釈をし、法廷を後にした。