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(10)弁護人「不自然」連発 検事はヒソヒソ…

彩香ちゃんがいなくなった後の鈴香被告の行動や供述内容に食い違いがみられる、という検察側の指摘に、弁護側の反論は続く。

弁護人「鈴香被告が、警察官に『彩香は河原に行って石ころを集めるのが好きだ』などと言っていたという証言は疑わしい。警察官が鈴香被告に『(彩香ちゃんは)何して遊ぶのが好き? どこか行くところはあるか?』といきなり尋ねたが、これは不自然だ」

「鑑定人は、鈴香被告がこのとき、睡眠薬の影響でうとうとしていたという。そういうときの状況を完全に覚えている方が不自然だ。供述の変遷といってもささいなことで、大筋では一貫している」

「帰宅後、(知人に)電話した時間などが食い違っているというが、相手の記憶があいまいな可能性もある。電話した事実の証拠は裁判に提出されていない」

ここで、弁護側の主張を座って聞いていた検察官2人が、反論をしたいのか、小声でヒソヒソ会話を交わした。

弁護人「子供が行方不明になりパニックになっている母親が、合理的な探索行動を取れるとは限らず、合理的な探索行動を取っている方が不自然だ」

弁護側はさらに、彩香ちゃん事件の際に、鈴香被告が健忘症状に陥っていたという従来の主張を展開する。鑑定人の意見を一部肯定しながらも、その解釈は検察側とは異なる。

弁護人「健忘症状は驚愕(きょうがく)的事実、予期せぬ事態の後、起きる。彩香ちゃんを転落させたことは、意図せぬ偶然のことだった。鑑定人は『子供を殺したことを忘れたい思いで健忘になった』というが、彩香ちゃんを自らの手で落としたことは間違いないのであって、忘れたいという思いが強く生じても不思議ではない」

「鑑定人は『鈴香被告が事実を健忘していたとしても、無意識で彩香ちゃんの救出活動ができた』と述べているが、無意識下で必ず救出活動をするとは言っていない」

最終弁論を読み上げる弁護人が交代するため、公判は午後3時に休廷した。すでに傍聴席に母の姿はなく、鈴香被告は全く傍聴席を見ずに立ち去った。

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