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弁護側「殺人が目的でなかった」

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人などの罪に問われ、死刑を求刑された元派遣社員加藤智大被告(28)=青森市出身=の第29回公判が9日、東京地裁(村山浩昭裁判長)であり、弁護側は最終弁論で「人を殺すこと自体が目的ではなかった」と死刑回避を求めた。加藤被告は「事件を起こすべきではなかったと後悔し、反省しています。遺族と被害者の方には申し訳なく思っています」と陳述した。昨年1月の初公判以来、丸1年に及んだ公判が結審。判決は3月24日に言い渡される。

 主な争点は責任能力の程度。検察側は前回の論告求刑公判で「何の精神障害もなく、完全責任能力があった」と指摘し、「犯罪史上まれに見る凶悪重大事件。改善更生は困難」と死刑を求刑していた。

 最終弁論で弁護側は、犯行動機について「大切な場所の携帯電話サイト掲示板に『(自分の)成り済まし』や『荒らし』が現れ、家族同然の人間関係を奪われたと怒りを感じ、嫌がらせをやめてほしいと伝えたかったことが全て」と説明。

 検察側指摘の「不安定な就労状況、容姿へのコンプレックス、交際相手が見つからないことに対する苦悩」を否定した。

 責任能力については、事件当時の記憶が欠落していることを強調し「精神疾患による心神喪失か耗弱だった疑いがある」と主張した。

 また、死刑を回避すべき事情として(1)殺傷が目的ではなかった(2)犯行の計画性や執拗(しつよう)性が乏しかった(3)母親の不適切な養育で形成された人格が強く影響した(4)内省を深めている−などを挙げ「改善更生の可能性は否定できず、終生にわたり責任の重大さを考えさせ、苦しみ抜かせることがふさわしい」と、極刑回避を訴えた。

 起訴状によると、被告は2008年6月8日午後、秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込み、3人を殺害、2人にけがを負わせた。さらにダガーナイフで刺し4人が死亡、8人が重軽傷。警察官1人も襲ったが、けがはなかったとしている。

⇒最終弁論要旨