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「死を重大と思えない性格」 精神科医証言

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大被告(28)の第27回公判が15日、東京地裁(村山浩昭裁判長)で開かれた。事件発生までの加藤被告の心理状態を分析した精神科医が弁護側証人として出廷し、事件の遠因として「『死』を重大なことと思えない死生観があった」と証言した。

 精神科医は、加藤被告が幼少期から母親から虐待に近い仕打ちを受けていたとし、「未来に展望が持てず絶望感を抱く性格や、低い自己評価を抱くにいたった」と述べた。殺人を決意した理由については「被告自身、死があまり重大と感じられないことが大きい」と指摘した。

 加藤被告は最後の被告人質問で、遺族やけがをした被害者の意見陳述を聞いた感想について「胸をえぐられる思い。何度申し上げても仕方ないが、大変申し訳なく思っている」と述べ、改めて謝罪した。

 また「社会全体に向け、事件が再び起こらないように(公判で動機などを)お話ししたが、(被害者らの陳述を聞いて)遺族の方や被害者と向き合うことが一番大切だと気付いた」と話した。

 そのうえで「事件当時は被害者のことに頭が回っていなかった。私が殺した方、傷つけた方、ご遺族の方一人一人がどういった方か、どんな思いなのか、最後まで自分の中に取り込み、申し訳ないという気持ちを持ち続けたい」と述べた。

 また、弁護側の請求で精神鑑定した医師が「被告は死ぬことを重大と考えない特異な死生観を持つ」と証言した点について聞かれると「死ぬことに恐怖はありません」と即答した。

 来年1月25日に検察側の論告求刑が行われる。

⇒加藤被告「もう思い出せない」/「真実を語って」願う声に