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両親の手記

 この度は息子勇貴の事件によって、世間の皆様に対し、大変なご心配をおかけしお騒がせ致しましたことを、紙面をお借りして心よりおわび申し上げます。

 私ども家族にとりましては、事件を知ったこの正月3日から今日まで、正直申し上げ、どのくらいの日時が経ったものか、正確には考えられない精神状態でございます。

 娘亜澄の死亡と二男の凶行とがどうしても結びつかないということが、私ども家族の苦しみ悩むところでございます。家族でさえこの情況でありますから、世間の皆様にはご理解できないことはなおさらのことと存じます。

 事件から約20日が経ち、警察のお調べが進むにつれて、事実については少しずつ解明されてきていますが、なぜ息子があれほどまでの凶行をしてしまったのかという点につきましては、いまだに理解できないのです。

 しかし、時間の経過にともない、おかげさまで少し落ち着いて考えることができるようになりましたので、現在の心境を少ししたためさせていただきます。

 そこでまず、亜澄と勇貴の関係についてですが、「3年間も口をきかなかったような冷たい関係」と報道されていますが、それは若干事実と違います。亜澄が在籍していた短大の入学についても、勇貴が懸命にパソコンで探し当て、やっと入学期限に間に合ったという経緯からも、兄妹の関係は決して険悪というものではありませんでした。

 しかし、亜澄の他を顧みない自由奔放な性格と言動は、家族から理解されていなかったのは事実です。

 こうした亜澄の生活態度を見ているうちに、亜澄と1歳しか違わない勇貴は、妹が両親を悩ます元凶と思い込むようになったのではないかと思います。

 また勇貴の性格ですが、優しく、家族に対し暴力をふるったりするようなことは1度もありませんでした。しかし、残念なことに、妹の亜澄は大変気が強く、絶対と言っていいくらい自分から非を認め謝るということのできない子供でした。

 とはいえ、2人とも私たちにとってはかけがえのない子供たちです。今となっては、なぜあのとき、亜澄が「ごめんなさい」と兄に謝ってくれなかったのか、もし、謝ってさえいてくれれば、兄も我に返り、このような凶行に至らずに済んだのではないか…、と今さらながら詮無い繰り言を繰り返す日々でございます。

 今後私ども夫婦は、生涯にわたり亜澄の霊を弔うとともに、勇貴が1日も早く更生できるように支え続けたいと考えております。

 どうか皆様、私たちがもう少し心の余裕が持てるまでお時間をいただきたく、伏してお願い申し上げ、本手記をお届けさせていただいた次第です。

⇒初公判