初公判(2010.10.19)

 

検察側冒頭要旨2 ペティナイフと果物ナイフで刺せば殺せる…

林被告

■被告が江尻さんに付きまとうようになった経緯

 〈1〉被告は、その後、江尻さんの携帯電話に「また店に行くから」というメールを送りましたが、江尻さんは接触やメールを拒む内容のメールを返しました。

 〈2〉しかし、被告は自分が江尻さんから拒まれた理由や江尻さんの気持ちに気付きませんでした。被告は4月5日の自分の態度が悪かっただろうと考え、江尻さんに会って謝れば、再度店に出入りすることを許してもらえるだろうと考えました。

 それで、被告は5月初旬、江尻さんが働いている店の駅近くで江尻さんを待ち伏せて跡をつけ、江尻さんを自宅近くで呼び止めました。そして、また店に行きたいと伝えましたが、江尻さんは断って、すぐにその場から立ち去りました。

 江尻さんは、被告のつきまとい行為に恐怖を感じ、防犯ブザーや催眠スプレーを持ち歩いたり、店長に自宅まで送ってもらうなどして警戒するようになりました。

 〈3〉被告はそれでももう一度会って話し合えば、また店に行くこともできるようになるだろうと思い、その後も江尻さんを待ち伏せました。

 被告は以前耳かき店での会話の中で、江尻さんから自宅の場所に関する話を聞いたことや、自宅前を撮った携帯電話の写真データを見せてもらったことがあり、待ち伏せ中にこれらの断片的な情報をつなぎ合わせて江尻さんの自宅を突き止めました。

 しかし被告は待ち伏せや付きまとい行為をしながらも、このまま江尻さんから許してもらえなければ、江尻さんと過ごす大切な安らぎの時間が失われてしまうと思い、不安を感じるようになっていきました。

 〈4〉7月19日の夜、被告は江尻さんの自宅近くで待ち伏せして、帰宅してきた江尻さんに対し、眠れないほど悩んでいることを伝え、また店に行きたいと言いました。

 しかし江尻さんは断って走って逃げ、近くのコンビニに逃げ込んで警察に通報しました。被告は江尻さんが逃げていったのを見て、店に出入りできないことへの失望と、受け入れてくれない江尻さんへの怒りを抱くようになりました。

■被告が江尻さんに殺意を抱くようになった経緯

 〈1〉被告は、江尻さんに、ストーカーのように思われて怖がられていることに気付き、待ち伏せするかわりにメールを送りました。

 しかし、そのメールが受信されなかったことから、被告は、江尻さんがメールアドレスを変更したのだと思いました。被告は、2回江尻さんに逃げられたことに加えて、メール受信も拒否されたことから、江尻さんと完全に会えなくなってしまうという絶望感、謝る手段すらないという追いつめられた気持ちを感じるようになりました。

 被告は、江尻さんに憎しみを抱くようになり、さらに殺してやりたいとまで思うようになりました。

 〈2〉このように被告は江尻さんの殺害を考えるようになりましたが、江尻さんに許してもらって耳かき店に通うという希望も失わず、8月1日にも江尻さんの帰宅時間に合わせて、待ち伏せしました。

 しかし、江尻さんがいつもの帰宅時間に帰らなかったため、被告は江尻さんが自分を避けるため帰宅時間を変えたのだろうと思いました。被告は憎しみがますます大きくなり、殺してやると思いました。

 〈3〉翌日の8月2日の日曜日、被告は一日中江尻さんを殺すかどうかを考え続けました。

 被告は別の用件で翌日の8月3日月曜日の休暇届を会社に出していましたが、平日の午前中の早い時間であれば江尻さんがまだ自宅にいるだろうと思い、殺しに行くのなら翌日だと思いました。

 また被告は耳かき店で、江尻さんから自分の部屋が2階にあると聞いていたことを思いだし、2階の江尻さんの部屋に行けば殺害できると思ったり、自宅にあるペティナイフと果物ナイフで刺せば、殺せるなどと考えました。

 〈4〉8月3日朝、被告は、江尻さんのことを考えるうちに怒りや憎しみばかりがわいてきて、江尻さん殺害を最終的に決めました。

⇒検察側冒頭要旨3「やめて」と叫ぶ被害者に「この野郎」 強固な殺意、残虐