第5回公判(2010.9.10)

 

(13)ドラッグセックス 「クスリが効いていたので2回目を

押尾被告

 合成麻薬MDMAを一緒に服用し、容体が急変した田中香織さん=当時(30)=を放置し、死亡させたとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われている元俳優、押尾学被告(32)の5日目の公判が続く。押尾被告の取り調べにあたった男性検事が証人として出廷し、男性弁護人による尋問を受けている。

弁護人「(田中さんの)容体が変化した時間についてですが、最初は(昨年8月2日午後)5時45分、次に5時50分と2通りありますがどういうことですか」

証人「5時45分と言いましたが、5時50分には落ち着いていたということです」

 早口で話す証人の発言に複数の裁判員が真剣に耳を傾けている。

弁護人「(押尾被告は)時計は見ましたか」

証人「時計ではなく、(被告の当時の)時間の感覚としてです」

弁護人「それは5時55分か6時という可能性もあるということですか」

証人「(取り調べの際の)押尾君の口から聞いた話だけなので…。はい」

 弁護人は、押尾被告が田中さんと行ったドラッグセックスの時間についても証人に質問する。

証人「『いつもは(ドラッグセックスを)1時間くらいでも、2回目でクスリが効いていたので(さらに)30分くらい(ドラッグセックスをやった)』ということでした」

弁護人「時間の幅がありますが、これは押尾被告の感覚ですか?」

 田中さんの容体変化について、弁護人が許可も得ずに質問を続けていることについて、山口裕之裁判長が注意した上で、弁護人が質問を続けた。

弁護人「今年1月5日の調書では、(田中さんの)容体の変化について5時50分、6時とあり、死亡が6時20分とあるが覚えていますか」

証人「はい」

弁護人「5時50分、6時に容体が変化したというのは押尾さんの感覚によるものなのですか」

証人「6時ごろからエクソシストのようだったと言っていました。最初はごちゃごちゃと独り言を言ったり元に戻ったり、またおかしくなったりと、サイクルが繰り返されたとありました」

弁護人「あなたの方で、(容体変化の時間帯は)このくらいの幅だろうとして感覚で時間をつくったのではないですか」

証人「違います」

 証人の検察官ははっきりと否定した。

弁護人「あなたのこれまでの知識をもとに取り調べを行ったことはありますか」

証人「ありません」

弁護人「以上です」

 押尾被告の供述から事件当日の状況を時系列順に記した証拠書類の別紙の表をもとに、もう1人の男性弁護人が尋問を始める。法廷の大型モニターには資料内容は表示されない。

弁護人「(証拠書類の別紙の)赤字部分で1月の供述との相違点があります。19時15分に『押尾、蘇生(そせい)をあきらめ、心臓マッサージと人工呼吸をやめた』とあります」

証人「はい」

 押尾被告が身を乗り出すようにして、隣の弁護人の前にある別紙をのぞき込む。

弁護人「別紙の内容はどの時点での供述ですか」

証人「これは…」

 検察側が異議を出す。話の前提として、この表が供述内容をまとめたものであるかどうか確認する必要があると主張し、認められる。

弁護人「これはいつの時点で作成されたものですか」

証人「担当替えなどもあり、正直分かりません」

弁護人「昨年8月に(押尾被告を)調べた際にまとめたメモですか」

証人「そのときは死亡が7時40分というようなことを言っていたので違います」

弁護人「8月のものとは違うし、いつの時点でまとめたものかも分からないということですね?」

証人「はい」

弁護人「今年1月の取り調べをするにあたりこの別紙は見ましたか」

証人「確かに見覚えはあります」

弁護人「1月の取り調べの際に別紙は参考にしましたか」

証人「1月5日の調べのときには見ていません。急に調べに入りましたので…。別紙を参考に調べたことはありません」

弁護人「押尾さんが平成21年8月に取り調べを受けたときにつくられた警察の供述録書があるのは知ってましたか」

証人「はい。8月には調書の内容にも目を通しました」

 押尾被告がメモを取りながら資料に目を通している。

弁護人「1月5日の取り調べでは、8月の調書を引用したことはありますか」

証人「ありません」

弁護人「8月16日付の供述録書にエクソシストという言葉がありますが、これは1月の調べの際にも参考にしましたか」

証人「8月の供述をもとにどうこうしたことはありません」

 男性検察官が最後の質問に移った。

検察官「証人は8月26、27日に押尾さんを聴取して、9月の半ばまで捜査に加わられた。そして1月に担当になられたのですか」

証人「はい」

検察官「押尾被告は本件以前にも逮捕されていませんでしたか」

証人「MDMAの譲り渡しを受け、逮捕されています」

検察官「そのあたりの調べのことなども含めて作成されたメモなのではないですか」

証人「はい。そうです」

検察官「つじつまが合いました。終わります」

 山口裁判長がこの日の審理終了を告げる。押尾被告が山口裁判長らに向かって深々と頭を下げた。

 次回公判は13日午前10時から。いよいよ押尾被告本人に対する被告人質問が行われる予定だ。

⇒第6回公判