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「加藤、よく聞け」遺族が意見陳述

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(28)の第24回公判が9日、東京地裁(村山浩昭裁判長)で開かれた。加藤被告運転のトラックにはねられて死亡した大学生、川口隆裕さん=当時(19)=の父親が出廷、「極悪非道の加藤を死刑にしてください」と意見陳述した。

 遺族が出廷して意見陳述するのは初めて。

 父親は被告人席の加藤被告をにらみ、「加藤、よく聞け。お前はなんて取り返しのつかないことをしたんだ。何で他人を殺傷しなければならないのか」と、厳しい口調で犯行を非難。「息子がどんな痛い思いをしたのか分からないのか」と興奮した様子で続けた。

 被告が「インターネットの掲示板を荒らす人たちにやめてほしいと伝えたかった」と動機を述べたことにも触れ、「いやなことはいくらでもあるが、世の中の人はお前みたいに他人を殺傷しない。みんな我慢しながら生きているんだ」と怒りをかみ殺すように話した。

 また、司法解剖の縫合痕が残る川口さんの遺体を見たときのことを振り返り、「おまえはよくこんな残酷なことができるな」と加藤被告に語りかけた。

 事件当日の08年6月8日、長男は被告が運転するトラックではねられ亡くなった。「助けてあげられなくてすまん」。遺体を前に何度もわび、駅のホームで長男と似た姿を見るたびに「息子では」と見入ったという。

 事件後に行われた成人式には、川口さんの代わりに出席したという。父親は「おれの息子を返せ。できることなら、お前をトラックではねてナイフで刺して殺してやりたい」と峻烈(しゅんれつ)な遺族感情をぶつけた。

 法廷のモニターには長男の生前の写真が映し出された。加藤被告は前を向いたまま表情を変えず聴き入り、陳述を終えた父親が傍聴席に戻る際に小さく頭を下げた。

 これに先立ち、村山裁判長が、川口さんとともにはねられて死亡した友人=同(19)=の母親の「世の中に、これほど不条理なことがあるのか」という内容の陳述書を代読した。

 加藤被告はほおを紅潮させながら、表情を変えずに陳述に耳を傾けていた。

⇒第25回公判