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(1)動機は「性奴隷にしたかった」 交際経験ない被告

東京都江東区のマンションで、2軒隣に住む会社員の東城瑠理香さん=当時(23)=を殺害して遺体をバラバラにし、トイレに流すなどしたとして、殺人、死体損壊、死体遺棄などの罪に問われた派遣社員、星島貴徳被告(34)に対する初公判が13日午前10時、東京地裁104号法廷で始まった。

東城さんの失踪(しっそう)が発覚したのは昨年4月18日。星島被告が東城さん方への住居侵入容疑で逮捕されたのは37日後の5月25日だった。ショッキングな遺体処理方法や、身近に犯人がいたこと、逮捕されるまで星島被告が平然と報道機関の取材に応じていたことなどが分かり、事件は社会に大きな衝撃を与えた。星島被告は逮捕直後の取り調べ段階では「捕まりたくない一心で、存在を消すため殺した」と供述していたとされるが、法廷でどのような犯行状況や心理を明かすのだろうか。

法廷には東城さんの遺影を持ったり、黒いネクタイを締めたりした遺族とみられる10人ほどが前列に座った。開廷が告げられる直前、ゆっくりと歩いて法廷に入った星島被告は黒いタートルネックに黒いズボン姿。短髪にめがねをかけ、表情は読み取れなかった。まずは中央の証言席に立つよう平出喜一裁判長に促され、弁護人席前の長いすから立ち上がった。

検察官「…玄関から押し入って侵入した上、(東城さんの)左前額部を右げんこつで殴り、タオル片で両手首をしばり、ジャージーズボンを顔に巻いて目隠しをし、その頸部に文化包丁を突きつけるなどして、同人を同室から918号室の被告人方に連れ込んで自己の支配下に置き、もってわいせつの目的で東城瑠理香を略取したものである」

検察官が起訴状を読み上げる。星島被告が起訴されている罪は殺人、死体損壊、死体遺棄、住居侵入、わいせつ略取の計5つだ。起訴状によると、星島被告は昨年4月18日ごろ、江東区潮見のマンションの東城さん方に性的暴行目的で玄関から侵入。東城さんを殴って両手首を縛り、ジャージーのズボンを顔に巻いて目隠しした上、首に包丁を突きつけて2軒隣の自分の部屋に連れ込み、包丁で首を刺して殺害した。その後、自室でのこぎりや包丁を使って遺体を細かく切断し、水洗トイレから下水道管に流したり、ごみ箱に捨てたりして遺棄した。

裁判長「今読み上げた事実に違っている点はありませんか」

星島被告「違っていることはございません」

裁判長「すべてその通りですか」

星島被告「その通りです」

裁判長「弁護人のご意見は?」

弁護人「公訴事実(起訴状の内容)はいずれも被告人同様、認めます」

星島被告と弁護人はともに起訴事実を認めた。事件では初公判前に論点を整理する公判前整理手続きが実施され、「起訴状の内容には概ね(星島被告側と検察側に)争いがなく、公判の争点は量刑になる」とする結論に至っている。予定通りの展開だ。

裁判長「それでは証拠調べに入ります。検察官どうぞ」

傍聴席からみて、裁判官席の右に設置されていた2枚の白いボードが裏返された。向かって左のボードには星島被告が住んでいた918号室と東城さんの916号室の見取り図が、右のボードには「平成20年4月18日夜から19日未明にかけての主な出来事」と書かれた時系列表がはってある。わかりやすい裁判を目指す裁判員制度を意識した取り組みだろう。検察官が、法廷で立証したい内容をまとめた冒頭陳述を読み上げる。

検察官「まずは事件の概要ですが、マンションに1人で住んでいた被告が、1つおいて住んでいた若い女性を無理矢理部屋に連れ込み、強姦することを考えたことから始まった事件です。警察が捜査していることに気づき、『このままでは逮捕される。行方不明を装って逮捕を免れ、自分の生活や体面を守ろう』と考えました。そのため、被害者を包丁で刺し殺し、下水道に流したり、ゴミ捨て場に捨てたのです」

検察官は続いて、星島被告と東城さんの経歴を読み上げた。被告が両親と10年以上連絡を取っていなかったことや、東城さんが出身大学からの留学生としては初めて英語教員資格を取得したこと、大学の所属学科を首席で卒業したことなどが明かされた。また、東城さんは皮肉にも、防犯設備が充実していることを理由の1つとして、マンションへの入居を決めたという。

検察官「いよいよ事件の核心に入りたいと思います。被告はこれまで、女性と交際した経験がありませんでした。そのための努力は何もしませんでした。そして、1人の女性に強姦し続けて快楽におぼれさせ、性奴隷にすることができると考えるようになりました」

驚くような“動機”が明かされた。ボードには赤い字で「性奴隷」と書いた文字がはられている。検察官の考えるキーワードの1つらしい。

検察官「性奴隷にするのは、若ければ誰でもよく、(昨年)4月12日ごろ、916号室の前で見つけた若い女性を、次の金曜日の18日に連れ込み、強姦しようと考えました。金曜日なら誰にも気づかれず、月曜日までじっくり強姦できると考えました」

検察官は「犯行状況を説明する前に」と前置きし、916、918号両室の間取りを説明した。両室とも玄関から縦に長いつくりになっており、玄関から入って右手に手前から流し台、冷蔵庫、クローゼット、左手には手前から洗濯機置き場、トイレ、浴室があり、奥には部屋があったという。

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