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(8)「鑑定医、どうせワイドショー見て…信用できない」

検察官「(最後の取り調べが行われた日の)調書は2通ある。あなたは言われるがままだった?」

鈴香被告「はい」

検察官「検事に逆らわなかったと言っているわりには、あなたが言った変な言い分も調書に取ってあるが」

鈴香被告「よく分かりません」

検察官「『事件より事故と思った方が、お母さんもいいのでは』とは、刑事さんは言っていないという話に対し、あなたは『言われた』と説明しているようだが?」

鈴香被告「検事さんから『○○刑事(実名)に謝ったのか』と言われ、『何を?』と聞いたら、『テレビに○○刑事の名前を出して、そういうことを言われたと話しただろ。署長に怒られたんじゃないのか』などと言われ、私は謝った」

検察官「質問の答えになっていませんね…。ところで、あなたは『(刑事から)調書に署名だけして、後で検事さんに使わないでって言えば平気だと言われた』と話している。しっかりと答えている。本当に『この日で終わりだ』と思って、気もそぞろで調書に署名をしたのか?」

鈴香被告「はい」

検察官「この日の調書で、あなたは訂正を求めて付け足しをしている。覚えているか?」

鈴香被告「何となく」

検察官「(事件の日に)彩香ちゃんに『乗らなければ帰る』と言ったとき、『本当に彩香ちゃんが乗らなかったら帰っていたと思う』ということを付け足したことを覚えていないか?」

鈴香被告「付け足したことは覚えている」

検察官「あなたが言ったことを、ちゃんと検事が調書に取っている。言われるがままの調書ではないのではないか?」

鈴香被告「いえ、ほとんど全部、検事さんの作った調書だ。その部分だけは訂正してくれたが」

検察官「さっさと終わらせたかったんでしょう? そんな申し立てはしなければいいのではないですか?」

鈴香被告「…」

検察官「答えないなら、いいです。ところで、あなたは精神科の鑑定の先生に、『意に沿わない調書を取られたか』と聞かれたこと、『覚えていない』と話している」

鈴香被告「はい」

検察官「覚えていないのですか?」

鈴香被告「はい」

検察官「精神科の鑑定は、大切だと思わなかったのか?」

鈴香被告「検事さんから、鑑定の先生は私にすごく興味を持っていて、ワイドショーや雑誌をチェックしていると聞いたので、信用できないと思って好意的な態度を取らなかった」

検察官「信用していなかったにしても、『取り調べで意に沿わない調書を取られている』とは話さなかったのか?」

鈴香被告「先生を信用していなかった」

検察官「困ると思ったのか?」

鈴香被告「いいえ。先生は調書から顔を上げないで質問をしてきたので、『やっぱり信用できないな』と思った」

検察官「あなたは、先生がワイドショーなどを見て、それで精神鑑定すると思ったのか?」

鈴香被告「思った」

検察官「ところで、あなたは決まりを破って、隣の房の人に話しかけたことはなかったか?」

鈴香被告「ない」

弁護人「異議あり! 関連がありません」

裁判長「関連性を説明してください」

検察官「反省している事実を確認したい。その人が懲役14年になったと知り『重いから控訴した方がいいんじゃないか』と言わなかったか?」

弁護人「誤導です」

鈴香被告「…」

検察官「ところで、あなたは極刑にしてほしいと言っている。豪憲君の件は普通の精神状態じゃなかったと、彩香ちゃんの件は殺していないと主張している。今の主張が認められたら、死刑になると思っているのか?」

鈴香被告「…検事さんはこうしてほしいとか、遺族の気持ちとかもあって、裁判長さんが判断するのだと思う」

たどたどしい口調で答える鈴香被告。

裁判長「あなたの主張が認められたとして、極刑を望むということか?」

鈴香被告「はい」

検察官「あなたの主張が認められて死刑になったら、争わない、控訴しないということか?」

鈴香被告「はい」

検察官「反対に、主張が認められなければ不満に思うのか?」

鈴香被告「不満かは分からないが、主張が認めてもらえればそれで構わない」

検察官「あなたの主張が認められなくても、極刑になればいいのか?」

鈴香被告「…それは分かりません」

⇒(9)「援助なしなら不倫。奥さんに言うぞ」